Kさんは僕らのマドンナだった。 高校1年の時、僕は彼女と同じクラスだった。 彼女は輝くばかりに美しく、クラスで一番というだけでなく、学年で最高の美人だと言われていた。 僕は勉強がとりたててできるわけもなく(進学校でみんな優秀だった)、授業中に面白いことが言えることもなく、一応、柔道部に所属していたが、3年生のとき学年で6人しかいなかったのに、唯一の補欠に選ばれるぐらいだったから、劣等感の塊のようなものであった。 Kさんは気さくな人だったが、僕には、遠い遠い完全に別世界に住む人だった。 彼女の美しさと、僕の劣等感が、その距離を必要以上に広げていたことは否めない。 薄れた思い出のどこかに彼女がいるシーンがないかと探してみるのだが、やはり、高校時代にKさんと話した思い出がない。 2年になるときクラス替えがあって、彼女とは別のクラスになった。 その時点で彼女は完全に別の世界の人になった。 もちろん