実況席から見えた景色に、胸がいっぱいになった――。 ラグビーワールドカップ、日本vs.アイルランド。ジャパンにとって目標とする決勝トーナメント進出へ向けた大一番。スタジアムは赤と白のジャージで埋まっていた。 「もうこれは、奇跡とは言わせない」 19-12。日本の勝利が確定した直後、そう力を込めて言葉にできたのには理由があった。 2015年の南ア戦、実況時の心境。 2015年イングランド大会、ラグビー史上最大の番狂わせと呼ばれた南アフリカ戦。この試合の実況担当も豊原だった。 「4年前の南アフリカ戦は、どのメディアでも相当厳しい戦いになると予想される中で、少しでも日本に有利な情報はないかと縋るように探しました。“チャンスはある”と自分に言い聞かせていましたね」 だが、ジャパンが見せた戦いは予想を大きく上回るものだった。スプリングボクスのお株を奪う献身的なタックル、周到に準備してきたサインプレー