パスカルを読んで、それが人生の役に立ったという事はおそらく、これまでに一度もなかったし、これからも永久にないであろう。なぜなら、パスカルとはこの世界とは違う座標軸に生きた一つの孤独であるからである。彼がもし「パンセ」を残さなかったら、彼の孤独は無限で完璧だった。だが、言葉は遺された。それによって、私達にはこの孤独の宇宙に入っていく通路が一つだけ残された。 パスカルのパンセは名著だが、普通の人がこれを読んで、何かを得る事はできないだろう。パスカルというのむしろ、普通人を全て拒否しているような人間だからである。「全ての事は気晴らしに過ぎない」「人間というのは惨め以外のなにものでもない」ーーーこんな事を説く人間を、どうすればよいだろうか。・・・もしも、パスカルが現代に生きていて、そしてその絶望的な教義によって、一人のスターとなったら(そんな事はありえないが)、今、古典や名著を読む事を推奨している