これまでの分析により,日本の携帯電話メーカーの競争力が低下した原因は,端末の競争市場が実質上存在しないこと,そして垂直統合的な産業構造そのものにあることがわかった。昨今,総務省はメーカーの国際競争力の問題に注目するようになり,様々な議論を行ってきた。しかし,その議論の経緯や打ち出している方策を見る限り,小手先の改善と様子見の意味合いが強く,内務官僚主導の議論からはかえってその限界を見せられた気がして仕方がない。今回は,これまで国内で交わされてきた議論を分析した上,筆者なりの考えをまとめ,提言を行いたい。 官庁主導の総務省による議論の限界 今年1月から総務省が開催している「モバイルビジネス研究会」(写真1)が内外から注目を浴びている。端末メーカーの国際競争力獲得への道筋が大きく開かれると期待されたこの研究会だが,後に議論の焦点は消費者の不公平感の解消に移り変わった。中心的な検討項目であるはず