プロ野球の投手といえば、150キロほどのストレートを投げ、鋭い変化球を武器に打者に挑むイメージがある。 だが、星野伸之という男を見るとそんなイメージはあっけなく崩れる。 星野は2002年に引退するまで通算勝利数176勝、歴代18位の奪三振数という偉大な成績を残した大投手だ。だが、現役時代にはほとんど130キロを超えるボールを投げることはなかった。 最近の中学生でも、実力ある投手は130キロを超えるストレートを投げる。つまり星野は「中学生以下」のスピードでプロの猛者たちと対戦し、結果を出してきたことになる。なぜ好成績を残すことが出来たのだろう。その秘密を「真っ向勝負のスローカーブ」 (著:星野伸之/新潮新書)から探っていこう。 【星野の"魔球"に対する考え】 星野の現役時代をある程度知っている人は「あの球」があったからだ、と考えるだろう。 彼には他の人が投げることが出来ないような"魔球"を持