第8回 幻の映画その1 「押井ルパン」の真相 「映画監督の未映像化プロジェクト」(エスクァイア マガジン ジャパン)というムックがある。世界のさまざまな監督の、制作に至らなかった作品、あるいは制作に至ったものの“諸般の事情”で望まぬ形になってしまった作品などを紹介した内容なのだが、惜しいかな、ここには押井守監督という項目はない。 押井監督にも、幻の映画企画がある。 しかも2本も。 さらにその2本の映画企画は「もしこの映画が作られていたら、アニメの歴史が変わっていたかもしれない」と“IF”を想像せずにはいられないほどの存在感を持っている。単なる「諸般の事情で実現できなかった企画」とは、その重みが違うのだ。 今回はそのうちのひとつをまず紹介したいと思う。 それは、俗に「押井ルパン」と呼ばれている『ルパン三世』の映画企画。 この企画がファンの前にお目見えしたのは、「アニメージュ」1984年10月