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ブックマーク / blog.livedoor.jp/pertinax (6)

  • 翻訳短編SFベスト50リスト : 那珂川の背後に国土なし!

    自分が海外SF短編のオールタイムベストNo.1に推すテッド・チャンの「あなたの人生の物語」が映画化されると聞いて最初はたまげた。かなり複雑な概念を扱っているうえに物語の構造そのものに大きな仕掛けを埋め込んである作品をどうやって映像化するのだ、全然違う話にするしかないんじゃないの、と。 しかし予想はいい方向に裏切られたらしい。出来上がった映画「メッセージ」(英題:Arrival)は批評家から絶賛の嵐であるという。しかも原作読者からも高く評価されているとのことで、これは楽しみだ。おそらく映画公開に合わせて、原作の短編集(短編と同題の『あなたの人生の物語』)も新装版で出るだろうしより多くの人にこの小説の面白さを味わってもらうにはどうすればいいのだろう、とつらつら考えているうちに、「あなたの人生の物語」にとどまらず、いまいち知名度のない短編SF全般について広く紹介していきたいな、という気持ちが芽生

    翻訳短編SFベスト50リスト : 那珂川の背後に国土なし!
    type-100
    type-100 2016/10/13
  • くだらない悲劇 空母「グローリアス」の沈没 前篇 : 那珂川の背後に国土なし!

    歴史的記録は不完全であることを宿命づけられている。個々の人間の行動をすべて記録することは不可能だ。たとえ何らかの革新によって外形的な行動が記録可能になったとしても、その意図までは、当事者が記録に残そうとしない限り残らない。歴史を研究しようとする者は飛び石のように残っている記録を慎重につなぎ合わせて行動と意図を再構成しようと挑む。当事者の述懐や文書に、その行動の意図が説明されている場合そのプロセスは省略できる…とは限らない。個人も組織も等しく、ときに大胆なまでの嘘をつくのだ。その嘘には秘密を守るためであったり、現在の外交関係を損なわないためといった理由でやむを得ずつかれるものもある。が、それと同じくらい、いやより多くは単にある個人や組織自体の面子を守るためにつかれるものである。軍隊はとりわけ威信・面子にこだわる官僚組織であってその例外ではない。何かまずい事態が起こったとき、起こった出来事自体

    くだらない悲劇 空母「グローリアス」の沈没 前篇 : 那珂川の背後に国土なし!
  • YOUは何しにフィリピンへ? フォースXの大いなる徒労 : 那珂川の背後に国土なし!

    ひとつの艦隊を地球の裏側まで到達させることはそれだけでも困難な事業である。日露戦争におけるバルチック艦隊の苦難を見ればそれはよくわかる。成功させようと思えば物心両面で周到な準備が必要なのだ。しかし戦時にはそのような準備が用意できないこともままある。これは政治的理由によって準備もそこそこに地球を半周させられ、関わった誰もが何も得るものもなく終わったある艦隊のお話。 わずか2週間後にクライド河口に集結を完了した英海軍太平洋派遣部隊「フォースX」には、キングの要請にはないある要素が付け加えられていた。要請にあった6隻の揚陸艦のほかに揚陸指揮艦「ローシアン」(元貨客船「シティ・オブ・エディンバラ」)が7隻目の構成艦として加わり、さらに「ローシアン」のマストには2つ星の少将旗が掲げられていたのである。公文書には何ら触れられてはいないが、英海軍は明らかにフォースⅩをもとの要請にあった「共同訓練」を超え

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  • 【ネタバレ】荒野をゆくノーマン 『フューリー』のある解釈【注意】 : 那珂川の背後に国土なし!

    エントリには映画『フューリー』の濃厚なネタバレが含まれています。未見の方は閲覧されないことをお勧めいたします。 一応自分なりに解釈して見ようと思う。冒頭車載機銃の引き金が引けない新兵の主人公ノーマンに度胸をつけさせるため、車長ウォーダディは投降して命乞いをする無抵抗のドイツ兵を無理やり射殺させる。その後ノーマンはウォーダディの持つドイツ軍への激しい憎悪にも感化されて、戦車を放棄して逃げるドイツ兵を「ナチスの豚野郎!」と叫びながら躊躇なく射殺できる「一人前の兵士」に成長し、そんなノーマンを仲間たちは敬意をこめて「マシン」とあだ名で呼ぶようになる。ドイツ兵を殺すマシンになったノーマンの変化に呼応するかのように後半登場するSS擲弾兵大隊の兵士はほとんどシルエットでしか表現されない(戦闘が夜間だからでもあろうが)。しかし皮肉なことにノーマンは顔のない「ナチスの豚野郎」であるはずの武装SSの兵士の

    【ネタバレ】荒野をゆくノーマン 『フューリー』のある解釈【注意】 : 那珂川の背後に国土なし!
    type-100
    type-100 2014/12/07
    なるほど、この読みは思いつかなかった。最後のシーンで「怒り」さえも奪われたわけか。そう思うと映画の世界観がより好きになった。
  • 「メトックス」をめぐる幻影 : 那珂川の背後に国土なし!

    ※動画から来られた方へ ブログ記事のアップデート版がこちらの電子書籍に収録されています。 『不都合な戦場:戦争をめぐる齟齬と失敗の話』 さまざまな関連情報や図版も追加してよりわかりやすくなっておりますので、なるべくこちらをご参照されることをお勧めします。 乏しい情報、相互の関連が不明確な事実の断片をつなぎ合わせて全体像を描き出す、そのような作業に最も必要とされる能力は、断片をつなぎ合わせる糊としての、また断片同士の間隙を埋める充填剤としての想像力であろう。豊かな想像力に裏打ちされた推論は一見関係の無いように見える事実と事実の間に思ってもみなかったような関連を見出し、物事の隠れた側面を引出し、認識することの難しい全体像を鮮やかに照らし出して見せる。しかし想像力は基的に直感の世界に属する能力であって、常に論理的・実証的な目で振り返り検証する姿勢を欠けば、それは暴走して実は関連の存在しなかっ

    「メトックス」をめぐる幻影 : 那珂川の背後に国土なし!
    type-100
    type-100 2014/09/26
    技術と謀略両面の情報戦
  • くだらない悲劇 空母「グローリアス」の沈没 後篇 : 那珂川の背後に国土なし!

    (承前) 6.ガイ・ドイリー=ヒューズという男 戦争への予感が高まる1939年6月15日、「グローリアス」乗組員総員による心からの見送りを受けて、ラムリー・リスター艦長は退任していった。彼は艦隊航空隊の空軍から海軍への移管という難しい時期に艦を大過なくまとめた有能さと穏やかで明朗な人柄で誰からも好かれた男であった。リスターは翌年イタリア海軍を一撃で一時的な壊滅に追い込んだタラント港夜襲を指揮して一躍英雄となり、戦中は空母戦隊の指揮官としてさまざまな戦域で活躍することになる。 士官たちはリスターの後任の着任を不安な面持ちで待っていた。その男は航空畑の人間ではないためほとんどの士官にはなじみがなく、第一次大戦の英雄、有能だが気難しく仕えがたい男、そのような断片的な評判が漏れ伝わってくるだけであった。リスターが実に仕事のしやすい上司であった分、後任者にその様な評判があることは気がかりな点である。

    くだらない悲劇 空母「グローリアス」の沈没 後篇 : 那珂川の背後に国土なし!
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