東日本大震災の余波で、大田区の町工場に特需が起きている。だが、経営者たちは「空洞化が加速する前触れ」と浮かぬ顔。その背景には、大企業の海外調達比率の拡大がある。 「部品メーカーの東北や北関東の生産拠点が稼働停止したことで、発注が大量に回ってきた」。東京都大田区にある自動車部品メーカーの社長は複雑な表情でこう打ち明ける。 その表情が浮かない理由は、東日本大震災で甚大な人的・物的被害を受けた被災地への遠慮だけではない。 この社長が大田区の周辺企業に聞いたところ、寄せられた大量の注文すべてをこなすことができず、中国など海外のメーカーに発注が流れてしまったケースが少なくないという。 「いったん海外部品で大丈夫という実績ができれば、その仕事は二度と国内に戻ってこない恐れがある。大田区の特需は一時的なもので、震災を機に、日本の部品産業の空洞化はますます加速してしまうのではないか」(同社長) こうした部