就職氷河期に就活をしただけなのにーー。ロスジェネに生まれた不運によって今も生活に困窮する「中年フリーター」たち。その悲惨な実情に光を当てた前回の記事は話題を呼んだ。 今回は、その存在が見落とされがちな〈女性の中年フリーター〉を取り上げる。女性の場合、結婚していると「苦境を脱している」と見なされがちだが、決してそんなことはない。 『ルポ 中年フリーター』(NHK出版新書)を上梓したジャーナリストの小林美希氏の試算によれば、結婚後も厳しい生活環境に喘いでいる女性の中年フリーターは400万人以上。これまで推定されてきた中年フリーター(男女含む)の数をはるかに上回る。 さらに彼女たちは、妊娠、出産、子育てといった「女性特有」の問題として社会から押し付けられた過酷な現実を目の前に立ち尽くすことが少なくない。小林氏が過酷な実情をレポートする。 「私も働かなければ家計は苦しい。けれど、あっさりクビになっ
かつての就職率の低さがウソのように、近年、新卒の就職市場は大きく改善した。 目下、日本を悩ませている社会問題はむしろ「人手不足」だ。政府は高齢者の雇用継続はもちろん、人手不足を補うための「移民政策」にも本格的に取り組み始めた。 しかし社会全体の雇用状況が改善するなか、正規の仕事を切望しても得られない「取り残された」人々がいる。就職氷河期に就活をして大きな割りを食った「中年フリーター」だ。彼らは相変わらず政策的な手当てをされないままでいる。 「ロスジェネ」と言われるこの世代は、10年以上前から状況の改善を求めて声をあげてきた。しかし、『ルポ 中年フリーター』(NHK出版新書)を上梓したジャーナリストの小林美希氏によれば、彼らは近年、長きに渡って状況が改善しないことに絶望し、あきらめの境地に入りつつあるという。 なぜ自分たちだけがーーそんな思いを抱えた中年フリーターの絶望と諦念、そして、彼らを
15%を超える貧困率(等価可処分所得が中央値の半分を下回る相対的貧困者の割合)が社会問題となっている日本だが、その予備軍の増加も深刻化している。“ほぼ貧困”状態にある[年収300万円家族]のリアルに迫った―― ◆長すぎた契約社員生活。周囲との関係を絶って孤立 ●倉橋時雄さん(仮名・43歳)/世帯年収250万円/家族構成:妻 40代前半は“就職に最も苦労した世代”といわれているが、就活に苦戦する先輩や同級生を見て早々にリタイアした者も少なくない。 「何社か受けましたが、超買い手市場の影響かやたら強気な面接官の態度を見て早々に諦めました。当時も派遣社員や契約社員ならありましたし、働きながら正社員を目指せばいいと思ったんです」 そう振り返るのは、清掃作業員として空港でバイトする倉橋時雄さん(仮名・43歳)。日本大学卒業後は携帯ショップで契約社員として働き始めたが、当初はあくまで腰掛けのつもりだっ
日本は豊かな国だろうか。GDPで中国に抜かれたとはいえ、まだ世界3位。れっきとした「経済大国」である。 データを見ずとも、日本は先進国に数えられると考える人も多いはずだ。むろん、G7(先進7か国)の中にも日本は含まれており、世界各国からもそのように認識されているだろう。 しかし、データを「深読み」していくと、意外な事実が浮き彫りになる。 厚生労働省の発表した2016年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、日本には約142万の「ひとり親世帯」がある。内訳は、父子世帯の約18万7000世帯に対し、母子世帯はその6倍以上、約123万2000世帯に上る。ひとり親世帯の9割近くが母子世帯だ。 注目すべきは、その経済的困窮ぶりだ。OECD(経済協力開発機構)の調査では、ひとり親世帯で、なおかつ親が就業している場合の相対的貧困率(全国民の所得の中央値の半分を下回っている割合)は、日本が54.6%と先進
“やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ) 消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。 「貧乏人は必死に耐えて生きろ!」と言わんばかりの消費増税まであと1年。同時に、「保育士は灰になるまで働け!」ってことになりかねない幼児教育・保育無償化が始まります。 「無償化」といえば聞こえはいいですが、無償化を進めるための「受け皿」の整備は一向に進んでいません。利用したい人が増えても保育士の確保はできていない。こんな状況下で懸念されるのは、保育士の負担の増加です。 実際、共同通信が8月に全国の自治体に行った調査では、回答した81自
――「女性が輝く社会」をつくることは、安倍内閣の最重要課題のひとつです。 すべての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、活躍できる社会づくりを進めてまいります。 2014年10月10日――(官邸HPより) 「すべての女性が輝く社会づくり推進室」と書かれた看板を、安倍首相と自称「トイレ大臣」こと有村治子氏が掲げたツーショットから、4年。 確かに「まぶしいほど輝いてる!」写真が、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された。 「Japanese Leader’s ‘Society Where Women Shine’: One Woman, 19 Men in Cabinet--Satsuki Katayama’s responsibilities include promoting gender equality--」 と題された掲載記事に使われた写真の「シルバーのドレス」である。 むろん記
派遣社員の4割が「今後は正社員で働きたい」と考えていることが、厚生労働省が17日発表した2017年の実態調査で分かった。ただ、調査では派遣社員が派遣先で正社員に採用されにくい実態も浮き彫りになり、「狭き門」の状態が続いている。 調査は4~5年ごとで、今回で4回目。17年9~11月、従業員5人以上の事業所を対象に同年10月1日時点の状況を尋ね、1万158事業所、派遣社員8728人から回答を得た。 派遣社員に今後の働き方の希望を尋ねたところ、「正社員で働きたい」が39・6%で最も多く、「派遣社員」が26・8%、「パートなど」が5・4%で続いた。正社員を望む人の勤務希望先は、「今の派遣先」が最多で56・8%だった。 一方、派遣社員が働く事業所のうち、「派遣社員を正社員に採用する制度がある」のは24・4%だった。また、「過去1年間に正社員に採用したことがある」のは、制度がない事業所を含めて13・0
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「〇万円の壁」に関しては、税と社会保険の扶養範囲を意味する「103万円の壁」、「130万円の壁」が長らく有名でした(少し知名度が下がるものとしては、住民税所得割非課税に関する「100万円の壁」や配偶者特別控除に関する「141万円の壁」)。 しかし近年になって「141万円の壁」が「201万円の壁」に引き上げられた上、「106万円の壁」「150万円の壁」とどんどん増えていきました。 さらに2018年8月の最終週になって、「82万円の壁」という103万円すら下回る壁の登場をにおわせる報道がされています。 8月27日に日本経済新聞朝刊の1面で報道された他、その前後に複数の報道機関で報じられた「厚生年金の適用拡大」が関わってきます。
バックパック1つで身軽に異国を長期間旅する若者は、おそらく今では少数派だ。格安航空会社(LCC)の利用やインターネットの進化、SNSの普及などにより、多様化した若者の海外旅行の現在を解説する。 かつての若者の海外旅行 2003年以降の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」、08年の観光庁の設置など、日本では訪日外国人旅行(インバウンド)が大きな注目を集めている。16年には初めて訪日外国人旅行者数が2000万人を超え、18年は3000万人到達への期待がある。その中で、日本人の海外旅行(アウトバウンド)への注目はあまり高くはなく、2000年代後半には「若者の海外旅行離れ」が話題となることもあった。本稿では、若者にフォーカスして海外旅行の最新の状況を解説したい。 まず1980年代以降に見られた若者の海外旅行の傾向を見ると、以下の4つの特徴が挙げられる。 第1は「バックパッカー」の旅。沢木耕太郎が1
福岡市東区箱崎6丁目の九州大箱崎キャンパスで7日朝に研究室を焼いた火災で、福岡東署は15日、焼け跡から見つかった遺体は研究室に出入りしていた同区の職業不詳の男性(46)と発表した。署によると、死因はやけどによる火傷死。男性が放火、自殺したとみて調べている。 【写真】九大箱崎キャンパスの火災現場で消火活動に当たる消防隊 署は、現住建造物放火か、非現住建造物放火の疑いで、男性を容疑者死亡のまま書類送検することも視野に入れている。 男性は九大法学部の卒業生。署によると、研究室の内側からテープで目張りがされた上、遺体の近くに灯油用のポリタンクやライターがあった。自宅からは、9月上旬にポリタンクを購入した際のレシートも見つかったという。 九大によると、男性は大学院に進学し、2010年の退学後も研究室を使用。大学院は、9月末に同市西区の伊都キャンパスへ移転を完了する予定で、男性に再三退去を求めていた。
先進国の感染症患者は減っているが、米国では一部の疾患のアウトブレイクが多発している。原因は所得格差の拡大による貧困層の増大にあると、米ジャーナリスト、M.モイヤーは報告している。米国ではここ数年、A型肝炎のアウトブレイクが頻発している。2016年8月からミシガン州南東部で始まり、18年1月までに患者が770人以上に達した。ワクチンが実用化した1995年以降では米国で最大規模だ。感染者の81%が
2018年度の最低賃金(時給)の引き上げ額について、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は25日未明、全国の加重平均で26円上げるべきだとの目安をまとめた。比較できる02年度以降で最大の引き上げ額で、実現すれば全国平均は874円になる。引き上げ率は3%となり、3年連続で政権の目標通りに決着した。 安倍政権は16年6月に閣議決定した「1億総活躍プラン」で、賃上げによる消費活性化やデフレ脱却を目指すため、最低賃金を毎年3%程度上げていき、1千円にする目標を掲げた。昨年3月に決定した「働き方改革実行計画」でも同じ方針を確認。こうした意向を背景に、16、17年度は25円ずつ引き上げられ、それぞれ引き上げ率3%を確保してきた。 今年も政権は、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で同様の方針を盛り込み、引き上げ額の目安を決める審議会にも理解を求めてきた。小委員会の議論で
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