ドイツは今世紀半ばまでに電力の80%を再生可能エネルギーで賄うという野心的目標を掲げた Fabian Bimmer-REUTERS <脱化石燃料・脱原発の野心的な目標をぶち上げたドイツだが、送電網の再整備が立ち遅れロシアの天然ガス頼みに> 今年8月の猛暑の日、ドイツ北部のバルト海沖に浮かぶリューゲン島に数百人のツアー客が集まった。お目当てはビーチではない。アルコナ洋上風力発電所が開催した「魅惑の洋上風力発電」展だ。 港には巨大な白いグラスファイバーのブレードが並んでいた。この長さ約75メートルのブレードは、約30キロ沖合にそびえる風力発電用タワー60基の上に設置されると、ガイドが説明した。2019年初めまでに発電量は385メガワットに達し、40万世帯分の電力を供給できるようになるという。 「わが社がここでやろうとしていることを一般の人たちに知らせて、『おお、すごい!』と言ってもらいたい」と
アラル海の砂漠化で残された「幽霊船」(ムイナク) Bahtiyar Abdukerimov-Anadolu Agency/GETTY IMAGES <遊牧民が古来大事にした湖をソ連は数十年で破壊した――砂漠を覆うのは悪臭と幽霊船、中ロに延びるガス管だった> 地球温暖化による環境変動が懸念されている。9月中旬、地図から消えてしまう前にアラル海を一目見ようと、筆者ら調査隊はウズベキスタンを旅した。 湖畔に近づくにつれて目と口を強烈に刺激する塩風が吹きすさび、辺り一面に死滅した貝類の山が広がる。悪臭で呼吸がままならず、滞在を切り上げた。 中央ユーラシアのトルコ・モンゴル系遊牧民は古くからこの湖を「アラル(多島)・テンギス(海)」と呼んで、こよなく愛してきた。アラル海周辺には遊牧民が残した古墳や石碑、王都の遺跡が分布し、遊牧民がこの地の主人だった歴史を物語っている。夏は天山山脈など冷涼な山岳地帯で
2011年春以来、毎年3月11日前後になると、ドイツの街角に必ずといってよいほど、「FUKUSHIMA」のアルファベットが、目につくようになる。当時、ドイツのメルケル政権は、即座に原子力発電からの全面撤退を発表した。その後は東日本大震災がおきた日本よりも、徹底的に脱原発路線を推進している。現在のところ、2022年までに、原子力発電所稼動を完全に停止する計画だ。 森林、石炭、石油そして原子力。エネルギー源の利用にはリスクがつきものであるが、原子力ほど、激しい賛否議論の余地を引きずる技術は他にない。そして、その弊害をしっかりと見極めずに、軍事、経済に応用されているのが、実態である。 痛ましい被爆犠牲者をだした長崎・広島への原子爆弾投下。米ソが核兵器で脅威しあった東西冷戦。チェルノブイリ、福島第一原発の爆発…。原発は、確かに他のエネルギー源と比べて、低炭素化の効果はあるが、その一方で、いったん放
関西電力の高浜原発3号機(福井県高浜町)が29日、再稼働した。原発を動かせば使った核燃料がどんどん増えるが、その処理もためておく場所も決まっていない。一時的に置いておく「中間貯蔵施設」の県外建設を、福井県知事は再稼働に同意する条件の一つとして挙げたが、見通しは立たないままだ。 【写真】関西電力高浜原発3号機の使用済み燃料ピットから取り出されるMOX燃料=2010年、福井県高浜町 原発の使用済み核燃料は、原子炉がある建物の中のプールで保管されている。関電によると、原発11基のうち、廃炉を決めた美浜1、2号機(福井県美浜町)を除く9基が動いた場合、7~8年後にプールが満杯になるという。実際は9基がすぐに動くわけではないので、さらに数年は持ちそうだが、再処理や中間貯蔵施設ができなければ、使用済み核燃料を置くところがなくなってしまう。 原発が動けば使用済み核燃料はたまっていく。すでに全国の原発
政府は先日、東シナ海の日中中間線付近に中国が建設した16基ものガス田開発施設の写真を公表しました。南シナ海しかり、なぜ中国は強引に海洋進出を画策するのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で、中国が置かれている危機的状況に起因すると分析しています。 なぜ中国は東シナ海ガス田開発を続けるのか ●政府、中国ガス田写真を公開=中間線付近に構造物16基─菅官房長官、中止要求 東シナ海での日中中間線近くで、中国がガス田開発のために16基の構造物を建設していることについて、日本政府は中国が一方的に資源開発していると批判し、中止を要求しました。 このガス田開発については、2008年8月に日中共同開発が合意され、当時は2箇所だった白樺(中国名・春暁)と翌檜(中国名・龍井)の掘削施設について、日本側が資本参加して詳細が決まるまでは中
本コラム「日本の水産業は崖っぷち」の開始から2年半が経過しました。この間にも水産資源は減少し続け、今年の6月にはウナギが、そして11月17日には太平洋クロマグロが、国際資源保護連合(IUCN)により、絶滅危惧種(「レッドリスト」)に指定されました。「崖っぷち」の資源予備軍は、まだまだあります。 皮肉にも、日本が漁業の主体である太平洋クロマグロの親魚資源量は、歴史的低位置付近という深刻な減少を続ける一方で、大西洋クロマグロは資源が増加中。同じマグロなのに、なぜでしょうか。太平洋と大西洋で何か違うことが起こっているのか、というとそうではありません。これは環境の変化の問題ではなく、「人災」と言える結果です。魚を一網打尽にする大型巻き網船が問題かと言えば、それも違います。ノルウェーをはじめとする北欧では巨大な巻き網船の建造が進んでいます。それなのに水産資源は安定し、地方の水産都市は栄え(写真)、漁
注目浴びる温泉発電所 日本は火山国だ。ということは地熱資源が豊富な国である。実際、火山の数では米国(160)、インドネシア(146)、日本(119)の順で世界第3位、地熱の資源量も第3位だ。ところが、地熱発電量では世界8位に沈んでしまう。しかも、日本の地熱発電量は1997年をピークに減少し、発電の認可出力は横ばいが続いて、この間は「眠っていた」と言われている(下図)。同じ時期にインドネシアやフィリピン、アイスランドなどがどんどん地熱発電所を増やしてきたのとは対照的だ。 (C)朝日新聞社 ここへきてようやく、温泉地での小規模な「温泉発電所」が増え始めた。福島原発事故が、地熱発電の眠りを覚まさせたのである。だが、目は覚ましたものの、まだ布団の中でぐずぐずしている状態と言っていい。なぜなのか、日本にある豊かな資源がなぜ利用されないのか。福島原発事故後、ずっと気になっていたことを考えてみる。 日本
発電事業者 見込み外れ怒り渦巻く 「国の政策じゃないのか」「銀行の融資を受けたのに」「命を懸けてやってるんだ」-。再生可能エネルギーの受け入れ中断をめぐり、東北電力が7日開いた2度の説明会。予定を大幅に上回る人数が詰め掛けた会場には、買い取り制度の適用を見込んだ発電事業者の怒りと恨みが渦巻いた。 「一方的な通達で、はしごを外されてはたまらない」。東北各地でメガソーラー(大規模太陽光発電所)を展開し、宮城県大郷町に2000キロワットの建設を計画する都内の会社に勤める男性(55)は憤りを隠さない。男性の会社は3月、系統接続契約の前段階である接続検討を申し込んだ。8月になって従来は必要なかった追加資料の提出を求められ、回答がないまま中断の知らせを受けた。国の方針を踏まえた対策を強調する東北電に対し「都合のいい弁明にしか聞こえない」と吐き捨てるように言った。 太陽光の設計・施工を手掛ける三沢市
21世紀政策研究所研究主幹 澤 昭裕 今日は、いま話題になっている電力の自由化問題について、気をつけておかなければならない点をいくつか申し上げたいと思います。 もちろん、こうしたメリットばかりが実現するならば、政策の方向性に大きな問題はありません。しかし、電力の自由化に伴って、様々なリスクやデメリットも生まれます。そうしたリスクやデメリットを正しく認識しておく必要があります。 第一に、いまの状況で電力の自由化を急げば、必ず料金は高騰します。 ここ20年来、電力の自由化政策は日本を含む世界中で進められてきました。 しかしその発端は、発電設備が余っていて、それが有効活用されていない状況が続き、そのために電気料金が高止まりしていたことにあるのです。自由化政策によって市場での競争状況を作り出せば、余分な設備を抱えている電力会社は経営が悪化します。それを避けるために、電力会社はより効率的な設
【北京・石原聖】無人探査機が14日に月面に軟着陸した中国の月探査計画「嫦娥(じょうが)計画」は、他の主要宇宙プロジェクトと同様、人民解放軍主導で推進されており、科学技術の進展以上に、関連軍事技術の開発や資源採掘などを目指すものだとの推測が出ている。 【鮮明画像】中国の無人月探査機が撮影した月の表面 中国は2003年に初の有人宇宙船「神舟(しんしゅう)5号」を打ち上げ。11年9月には宇宙ステーション建設に向けた無人実験機「天宮1号」を打ち上げるなど、主要な宇宙開発計画を次々に成功させてきた。 嫦娥(月に住む伝説上の仙女)計画には、探査▽有人着陸▽月面ステーション建設による滞在−−の段階がある。今回の嫦娥3号は探査段階。有人着陸は25年ごろまでの実現を目指している。採取するデータなどは、将来の月面基地建設の候補地選定にも、活用されるとみられる。 月面探査の目的としては、国威発揚に加え、将
中国は14日、無人の月探査機による月面への着陸に成功し、将来的な月の資源獲得を視野に探査計画を加速させるものとみられます。 今月2日に内陸部、四川省の衛星発射センターから打ち上げられた無人の月探査機「嫦娥3号」(じょうが)は、月の上空およそ15キロの周回軌道から徐々に高度を下げ、日本時間の午後10時10分すぎ、月面に着陸しました。 無人探査機による月面着陸に成功したのは、旧ソビエトとアメリカに続いて世界で3番目で、1976年に旧ソビエトが打ち上げた「ルナ24号」以来、37年ぶりです。 着陸の模様は国営テレビを通じて中国全土に中継され、国の威信をかけたプロジェクトであることを強くうかがわせました。 「嫦娥3号」には月に住むうさぎを意味する「玉兎」(ぎょくと)と名付けられた探査車両が搭載され、およそ3か月かけて月面の形状や地質構造の調査を行う予定で、将来的な月の資源獲得を視野に探査計画を加速さ
東京の新丸の内ビルディングのオフィスで働く人たちは、パソコンのスイッチを入れたり、朝のコーヒーを入れたりする時、お決まりの作業をしているだけではない。 日本の一部の改革論者に言わせると、彼らは日本でも特に時代遅れの経済部門を少しずつ切り崩している。独占企業が支配する電力市場である。 日本の首都の中心部にあるこの近代的な38階建てのビルを動かす電力は、2010年以降、北に600キロほど行った青森県の岩だらけの海岸にある風力発電所で発電されている。 ビルを所有する三菱地所は、東京の主要電力会社である東京電力を飛び越え、この風力発電所のオーナーである、出光興産が設立した「グリーンエネルギー」の共同事業体と契約を結ぶという珍しい手段を取った。 世界で最も高い部類に入る電力料金 契約は合法だったが、異例だった。日本の電力業界は10年前に部分的に自由化されたにもかかわらず、東電のような既存の電力会社を
政府は、新潟県沖で油田・天然ガス田の商業開発に向けて試掘に入る方針を固めた。来年4月にも掘削を開始し、埋蔵量を3年かけて調査する。 地質調査の結果では国内最大の油田・ガス田となる可能性もある。 試掘地点は、新潟県の佐渡島から南西約30キロの水深約1000メートルの海底。2003年に周辺海域で試掘した際、少量の石油やガスの産出が確認されていた。 経済産業省資源エネルギー庁は、08年に導入した3次元物理探査船を使用して地層構造を精密に分析した結果、海底から2700メートル下にある地層のうち、約135平方キロに及ぶ範囲で石油や天然ガスの埋蔵の可能性があるとのデータを得た。面積はJR山手線内の約2倍に相当し、同庁は「面積では海外の大規模油田に匹敵する」としている。
関連トピックス関西電力原子力発電所東京電力大飯原発3、4号機=4月13日、福井県おおい町、朝日新聞社ヘリから、佐藤慈子撮影今夏の計画停電の手順案 野田内閣は1日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)が再稼働しても、関電など4電力管内で計画停電の準備を進める方針を確認した。電力需要が増す7月上旬までのフル稼働が間に合わないとみているためで、緊急の事態に備える。関電管内では1日2回実施する地域が出る一方、原発周辺地域は対象外とする方向だ。 計画停電は、7〜15%の節電を要請する北海道、関西、九州、四国の4電力管内が対象。実施主体は電力会社だが、昨年の東京電力管内で実施した時の混乱などを踏まえ、内閣としても準備にかかわる。 内閣が1日にまとめた計画停電の手順案では、1日1回2時間程度を基本とするが、関電管内は1日2回の地域も想定。原発周辺地域を対象から外すのは防災や緊急時対応が理由
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