「兵士はむしろ町中で自由に誰か襲う相手を見つけています」 私は今回の取材をスタートさせた当初(編集部注:2010年末頃)に高里の事務所を訪ねて、米兵による性暴力の嵐が吹き荒れていた時代の空気と状況をさらに生々しく知るためにインタビューを試みた。白髪の凜とした佇まい。高里は私の取材動機を一通り聞くと、米兵性犯罪のリストもふくめ、膨大な資料の中からいくつもの書類を手渡してくれた。高里の言葉とそれらの資料は、その先の私の取材活動の一つの道しるべとなった。 ──高里さんたちが作成された記録を読むと、米兵による目を覆いたくなるような性犯罪が毎日のように起きていたことがわかりますが、大半は「容疑者不明」となっていますね。 「容疑者不明となっているのは、犯人は私たちでは知り得ないということです。米兵が住民の生活圏の中に入ってくるわけです。そうすると部落の入り口で鐘(酸素ボンベ)を叩いて、米兵が来たと叫ん