戦後英国の日本学をオックスフォードとシェフィールドの両大学に起こして基礎を固め、たくさんの学者を育てながら、政治権力とは終生無縁、弟子達に囲まれ学統の頭目としてふんぞりかえることもなかったのがジェフリー・ボウナス教授である。 今は亡き、と言わなくてはならなくなった。 自伝的随想によれば、父は第1次大戦に通信兵として従軍、復員後は郵便局員になった。その子として1923年、ヨークシャーの片田舎に生まれた教授の実家は、とりたてて裕福でも、書物があふれている場所でもなかったようだ。 けれども良い先生や、通った図書館では献身的な司書に恵まれ、奨学金を得てオックスフォード大学クイーンズ・コレッジへ進む。 英国にも存在した歴史の皮肉 日本が米英相手に仕掛けた自暴自棄な戦争は、それがなければ恐らく日本に目を向けなどしなかっただろう若い俊秀を、極東の島国へひきつけることになる。歴史の皮肉である。 ドナルド・