「こんな大容量に、一体何を入れるんだ」――。九州大学の学生だったころ、喜々津哲氏は1MB以上のフロッピーディスクを初めて目にしたとき、真剣にそう思った。 しかし、実際に使ってみると全然足りない。「人間の欲望には限りがない。これからも容量があればあるだけ、新しい使い方、需要が生まれてくる」。 事実、ハードディスクの容量は拡大の一途をたどり、メーカー各社は開発競争に明け暮れている。喜々津氏は東芝の研究開発センターで、ハードディスクの記録密度を向上させる研究の最前線に立つ一人だ。 目下の研究内容は大きく2つ、一つはデータの書き込み時にディスクの書き込む部分をレーザーで温めて書き込みやすくする「熱アシスト」。もう一つはディスクに書き込む磁気情報を極小の点状に配置して、記録密度を上げる「ビットパターンドメディア」。どちらも実用化が一刻も早く望まれる、高密度化に欠かせない新技術だ。 喜々津氏が東芝に入