「1980年代に初めてインターネットに触れ、サイバーと物理が遊離し誰もがやり直せる空間だと仲間内で興奮して話したものだ」。日本のインターネットの父と呼ばれる慶応義塾大学の村井純教授は、30年前のネット黎明期を振り返る。 実名を知らない利用者同士が協力し、一定のルールのもとコミュニティを運営する。そんな古き良きネットの姿は、30年を経た今、理想とかけ離れた形になりつつある。 万引きされた本、盗まれた自転車や野球ボール、現金――。 フリーマーケット(フリマ)アプリ市場が急拡大するにつれ、最大手のメルカリで規約違反の出品が相次いだ。事業者は一部の悪徳利用者による違法・規約違反行為に手を焼く被害者である一方、出品者の厳格な本人確認が後手に回っていたという不備も明らかになった。 「国内ではシェアリングサービスへの不安が根強く、先進的な利用者層から先へと市場が広がりにくい」。シェアリングエコノミー協会