まるでおとぎ話だ。長崎県の離島、大島の県立大崎高校が昨秋の九州大会を制し、この春、選抜高等学校野球大会に初出場する。半島と小さな島々からなる西海市の高校としては史上初の甲子園となる。もちろん、部員全員が長崎県出身だ。驚くのはそれだけではない。1人の監督が、わずか2年半で、廃部寸前まで追い込まれていた弱小チームを一気に生まれ変わらせたのだ。監督の名前は、清水央彦。清峰(長崎)のコーチおよび部長として春夏計4度甲子園に出場し、佐世保実業(長崎)では監督として2度甲子園に導いた。清水は野球関係者の間では伝説的な名指導者だ。理論派であると同時に厳しいことで有名でもある。そんな清水のもとで「奇跡」を起こした主将の秋山章一郎、エースの坂本安司、一昨年の冬、ある「大事件」を起こした二塁手の村上直也に話を聞いた(全3回の3回目/#1、#2へ)。 (1)主将の秋山に聞く「練習は厳しい?」 ――練習中、みんな