いま私たちが立ち会っているのは、次なる食の革命の幕開けなのかもしれない。そんな期待をかき立てるのが、細胞農業だ。 細胞農業とは、動物には手を触れず、広大な農地をより自然な生息地として動物たちに返しつつ、本物の肉をはじめとしたさまざまな畜産品を研究室で生産する手法だ。学問と医学の分野で開発された技術を利用して、ほんの少量採取した動物の筋細胞から生体外で筋組織をつくるのだ。 現在、複数のスタートアップが、この技術によって商品の開発を進めている。さらには、動物の幹細胞に完全に見切りをつけて、牛乳、鶏卵、レザー、ゼラチンを分子レベルから生産しているスタートアップもある。これらの製品はどれも、これまでの畜産品と実質的に同じ、本物だ。ただし生産過程には、まったく動物が使われていない。 スタートアップ各社はこの新技術を応用し、英国の元首相、ウィンストン・チャーチルの予測(※)を実現しようと懸命に働いてい