ビール醸造に欠かせない原料のビール大麦とホップ。北の大地、北海道はこの両方を手がける主要産地の一つであり、サッポロビールが設ける原料に関する研究拠点もそこにある。ビールに対する消費者の嗜好(しこう)やニーズが多様化し、新たなビールの形が求められている。これに対応するため、ビール大麦とホップはここにきて大きく変わろうとしている。変革期を迎えたビール原料の今を追った。(編集委員・井上雅太郎) 2019年夏の北海道・上富良野―。真っ青な大空の下、大きな穂を実らせた麦が金色の絨毯(じゅうたん)のように風にたなびいていた。収穫前を迎えたビール大麦の大海原が広がる。 毎年見る風景だが、今年はいつもと少し違う。従来、主流だった品種「りょうふう」をサッポロが開発した新品種「きたのほし」に全面的に変更したのだ。品種の入れ替えは実に30年ぶりとなる。 きたのほしはビール大麦に含まれ、ビールの風味や泡持ちを劣化