かつて東京スタイルという名門婦人服メーカーがあった。2002年には解散価値の高さから村上ファンドに株を買い占められ、日本中の注目を集めた。村上ファンドの要求は退けたが、2011年に同業と経営統合。まもなく経営権を失い、名門アパレルは消滅した。激動の裏でなにが起きていたのか。『アパレル興亡』(岩波書店刊)を上梓した作家の黒木亮氏が解説する――。(前編/全2回) 「会社は誰のものか」を問いかけた大騒動 かつて東京スタイルという名門婦人服メーカーがあった。デザインの華やかさは今一つだったが、しっかりした縫製など、ものづくりの技術に定評があった。東証1部上場で、約9割という驚異的な自己資本比率を誇っていたが、あまり目立たず、業界上位のオンワード樫山に追いつくことを目標にしていた。そんな同社が、2002年、突如世間の注目を集めた。村上ファンドが株を買い占め、高配当や役員の派遣を求めからだ。 22年間