米自動車大手「ビッグスリー」の一角を占めるクライスラーは、1970年代後半に大きく低迷していた。1940年にシェア25%で業界2位だった同社が、78年にはシェア11.1%で業界3位。しかも、上位2社(GMとフォード)がいずれも史上最高の業績を記録する中、クライスラーだけが不振だった。 「全員が勝手に仕事をしていた。見ただけで吐き気がした」 78年11月2日、元フォード社長のリー・アイアコッカがクライスラー社長に就任。ちょうどその日、クライスラーは第3四半期の赤字が1億6000万ドルという、史上最悪の業績を記録していた。 クライスラーの問題点は組織のタテ割り、杜撰な経理、そして士気の低下にあった。 まず、クライスラーには35人の副社長がいたが、それぞれの副社長が縄張りを強く主張していた。「一事が万事で、全員が勝手に仕事をしていた。見ただけで吐き気がした」と、激しい口調でアイカコッカはその様子