他のすべての人たちと同様に、私もカネを稼ぐ必要がある。公務員になるつもりがない以上、他者から強制的にカネを吐き出させることはできない。何らかの価値を提供し、その対価として顧客からカネをいただくしかない。 私がフリーランスの技術者として働くときには、カネの心配は顧客がしてくれる。マーケターとしての顧客は、広く薄くカネを稼ぐ方法を考え、システムの仕様を決める。私は、技術的なアドバイスはするけれども、基本的に顧客がいうとおりにシステムを作るだけだ。私は提供した役務の対価として報酬をいただく。 ただ実際のところ顧客が求めているのはシステムではない。システムの向こう側にある(と顧客が信じるところの)売上なのだ。「顧客が求めているのはドリルではなく、穴だ」というわけだ。 職業技術者としての私の最大の欠点は、そのとき顧客が目指すビジネスモデルにほとんど興味が持てなかったことだ。むしろしばしば軽蔑すらした