北アフリカのエジプトでは、女性への差別や嫌がらせがいまだ根強い。2013年の国連調査では99・3%の女性がセクハラを受けた経験があると回答した。人口の約3割が年収5万円に届かない貧困国でもある。この地で、娘のため男装して半世紀近く働いている女性がいる。数千年続く農村社会が残る南部ルクソールで、その波乱の人生を聞いた。(共同通信=高山裕康) ▽男性の民俗衣装にたばこ姿 ルクソールの地元バスターミナルでは、コロナ禍でもマスク姿は皆無だ。未舗装の道路わきに、大声で客の運転手と笑い合う靴磨きのシサ・アブドハさん(70)がいた。頭には白いターバン。服はガラベーヤという貧しい男性がよく着る民族衣装。タバコ片手に無骨に振る舞うシサさんは一見、男性にしか見えない。 常連の運転手ムサさん(34)は「みんな彼女が女性だと知っている。家族のためだから、からかう連中は俺たちが追い払っている」と笑った。靴磨きは1回