憎しみと愛。相容れぬ感情が渦巻く美しき“猛毒”BL(井上將利) 人ならざるものを描くことは、人間のそれとはまた違った表現が楽しめる特殊なカテゴリーであり、BLの世界でも確立された一つのテーマであると思います。 そんな人外の世界で僕が絶対に外せない作品が、文善やよひさんの「鴆-ジェン-」(プランタン出版)です。 この作品の舞台となる国には鴆(ジェン)という鳥人が存在しており、その美しい羽根や姿から愛玩動物として好まれ、同時に権力者のステータスとなっていました。しかし、鴆は人にとって有毒な食物を好み、その毒素を鮮やかな羽根色に変える生き物で、人が襲われればたちまち死に至る猛毒を持つ危険な存在でした。 これは、かつて兄弟で鴆を育成する鴆飼(ジェンスー)であったフェイと、国一番の美しさと称される鴆・ツァイホンの愛と憎しみの物語。フェイは昔、自身が育てた鴆を理不尽に失ったことがきっかけで鴆飼を辞め武