◇小西聖子(たかこ)・評 『「戦争」の心理学--人間における戦闘のメカニズム』=D・グロスマン、L・W・クリステンセン著 (二見書房・2520円) ◇究極の実用性、合理性から何を学ぶか 健全に人を殺すにはどうしたらいいか--人を殺すことが職務である人たちに向けて書かれた優良なハウツー本。一言で言うならそういう本である。その実用性、合理性が、新鮮な面白さと何とも言えない違和感を同時に感じさせる。 第二次世界大戦の最中にアメリカ軍で兵士の大規模調査が行われた。戦闘直後に行われた調査によると、ドイツまたは日本軍との接近戦に参加した兵士の発砲率は、どの場合でも15%から20%だったという。撃っても当たらないとか、逃げ出したということではなく、8割以上の兵士は、発砲さえしていなかった。敵と至近距離で向かい合ってさえ人は簡単には人を殺せない。そして、二〇世紀になってからの戦争ではつねに、ストレスで心身