※フィクション小説です。5分くらいで読めます。ちょっと18禁。 そこは 穴のあいた村だった そこは、やけに穴の多い村だった。犬が歩いても穴。人が歩いても穴。そして人はめったに歩かない。車で移動することがほとんどの村だった。山に囲まれて、歴史名所にめぐまれた、日本の真ん中あたりにある小さな村。村の名前は仮に「A村」としておく。自然に恵まれた、小さな村。 穴が多いこと以外は、東京の郊外となんら変わらない。大人は仕事をして、子どもは学校へ行く。年頃になると男と女は二人で出かけるようになる。 穴は、村において位置を示す指標となった。時として待ち合わせの目印にも使われた。大きな穴が二つ並んだ「ふたご穴」や、大きな穴のよこに小さな穴があいた「親子穴」。 穴の形状は、地面にぽっかりとあくだけではなかった。崖には、女のこぶし一つ入るか入らないかの細い横穴があった。ある日通りがかった若い女が横穴に手を入れた