安倍内閣が集団的自衛権行使を認めた7月1日は、日本の立憲主義の歴史において、最も不名誉な日として残るだろう。 首相自ら憲法の制約をふりほどき、定着した解釈をひっくりかえした。国会に諮ることも、国民の意思を改めて問うこともなく、海外での武力行使に道が開かれた。 従来の積み上げを突き崩す解釈変更は、本来の改憲論にとっても屈辱のはずだ。ルールの改正は、ルールの尊重を前提とする。憲法改正は、憲法への敬意なしには成り立たない。 69年前、日本は世界を相手にした戦争に敗北した。明治以来の「富国強兵」路線のうち、「強兵」は完全に破綻(はたん)した。それに代えて国民が求めたのが、9条に基づく平和主義だった。 日本はその後、米国と安保条約を結び、自衛隊を発足させた。しかし、戦前の反省から、その枠内でも軍事的要素を極力抑制し続けたのである。 9条か安保・自衛隊か、ではなく、日本は9条の理念と安保・自衛隊の現実