岩田温氏世界中で奇妙な現象が見られる。「リベラル」を自称する人々が自分たちとは反対の意見を封じようとするポリティカルコレクトネス運動が多発しているのだ。自由主義(リベラリズム)に立つ者が、その原則である価値観の多様性を執拗(しつよう)に攻撃するとは実に奇妙だ。 自由民主主義社会は多様性の擁護を基盤とする。一人一人の価値観が異なることを前提とし、暴力や抑圧による価値観の強制を拒絶する。表現の自由、思想信条の自由は最大限尊重されなければならない。古典的自由主義思想家ミルは名著「自由論」の中で次のように指摘している。 「一人の人間を除いて全人類が同じ意見で、一人だけ意見がみんなと異なるとき、その一人を黙らせることは、一人の権力者が力ずくで全体を黙らせるのと同じくらい不当である」