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ブックマーク / www.tachibana-akira.com (34)

  • 女の子同士のいじめはどういうルールで行なわれているのか? – 橘玲 公式BLOG

    ダイヤモンド社と共同で行なっていた「海外投資の歩き方」のサイトが終了し、過去記事が読めなくなったので、閲覧数の多いものや、時世に適ったものを随時、このブログで再掲載していくことにします。 今回は2020年3月26日公開の「「間接的攻撃」を多用する裏攻撃による「女の子のいじめ」の研究」です(一部改変)。 ****************************************************************************************** #MeToo運動で頻繁に登場したのが、“toxic masculinity”という言葉だ。これは日語で、「毒々しい男らしさ」と訳されている。「男はマッチョであるべき」というマチズモのことだが、そこにtoxic(毒性の)というネガティブな形容詞をつけたことで、「セクハラやドメスティックス・バイオレンス、レイプなど

  • 令和は団塊の世代に年金を払う時代 週刊プレイボーイ連載(380) – 橘玲 公式BLOG

    新元号が「令和」になったことで、あらためて「平成」や「昭和」を振り返る機運が盛り上がっています。 第二次世界大戦が終わると、すべての国で出生率が大きく上がるベビーブームが起きました。日では「団塊の世代」と呼ばれ、1947年から49年までの3年間の合計出産数は800万人を超え、日の人口ピラミッドのなかで突出したブロックを構成しています。 1960年代後半に青年期を迎えた彼らは、フォークやロックなど欧米の新しい音楽を真っ先に取り入れ、安保闘争などの学生運動にかかわったのち、70年代には「企業戦士」として戦後の高度成長を牽引します。昭和は戦前と戦後に分かれますが、多くのひとがイメージする「昭和」は80年代末のバブル経済で頂点に達するこの時期でしょう。 元号が昭和から平成に変わる頃、団塊の世代は40代前半で、子育てにもっとも経済的負担のかかる時期にさしかかっていました。バブル崩壊は彼らの人生

    令和は団塊の世代に年金を払う時代 週刊プレイボーイ連載(380) – 橘玲 公式BLOG
  • 厚労省が失態を繰り返すのは「素人」だから 週刊プレイボーイ連載(369) – 橘玲 公式BLOG

    雇用保険や労災保険の算出にも使われる「毎月勤労統計」の不適切調査で、厚生労働省がふたたび大きく揺れています。ただし報道を見るかぎりでは、事件質は半年ほど前に起きた裁量労働制についての調査データの不正とまったく同じです。 なぜこんな失態を何度も繰り返すのでしょうか? その理由はきわめて単純です。素人がやっているから。 日の会社の際立った特徴はスペシャリスト(専門家)をつくらないことで、「ゼネラリストを養成する」という建前のもと、数年単位でまったく異なる部署に異動させていきます。 総務部から営業部への異動や、経理部から地方支店への転勤など、日の会社で当たり前のように行なわれている人事を聞くと、海外のビジネスパーソンは腰が抜けるほど驚きます。世界標準の働き方では、学歴・資格で仕事の内容が(おおよそ)決まり、専門外の分野に移ることはないからです。 世界でも特異な日的雇用慣行は役所も同じで

    厚労省が失態を繰り返すのは「素人」だから 週刊プレイボーイ連載(369) – 橘玲 公式BLOG
  • 中央省庁が障がい者雇用を水増しするほんとうの理由 週刊プレイボーイ連載(352) – 橘玲 公式BLOG

    10年以上前のことですが、住民票が必要になって、自宅近くにある区役所の出張所を訪ねました。窓口の担当は右腕のない青年で、わたしが身分証明書類を持ち合わせていなかったため、人確認のため個人情報を訊ねなければならない非礼を詫び、手際よく事務を処理してくれました。 出張所のフロアには20人ほどの職員が働いていましたが、障がい者は彼1人でした。書類が出来上がるのを待ちながら、わたしはふと疑問に思いました。世の中にこれほど障がい者に適した職場がありながら、なぜその場所を健常者が独占しているのだろう? 市場経済では、利益をあげなければ会社はつぶれてしまうのですから、どれほど社会貢献に熱心でもいずれは「効率性」の壁にぶつかります。しかしわたしたちの社会には、利潤の最大化を目指さずに働ける職場があります。それが、国家や自治体の「公務」です。 だとしたら、国防や警察・消防など一定以上の身体能力を必要とする

    中央省庁が障がい者雇用を水増しするほんとうの理由 週刊プレイボーイ連載(352) – 橘玲 公式BLOG
  • 「バカ」「死ね」に表現の自由はあるのか? 週刊プレイボーイ連載(351) – 橘玲 公式BLOG

    ネットセキュリティ会社の社員が、「低能先生」と呼ばれていた40代の男性に刺殺されるという衝撃的な事件が起きました。 報道によると、容疑者は国立大学を卒業したあと職を転々とし、3年前は福岡県のラーメン店で働いていたものの事件当時は無職でした。その学歴からわかるように、容疑者はけっして「低能」ではなく、ネットのコミュニティで他のユーザーを「低能」と誹謗中傷することからこのあだ名をつけられたようです。無職でも生活できたのは、おそらくは親の援助で暮らしていたからでしょう。 地元で最高の大学を卒業したものの社会生活がうまくいかず、ラーメン店を辞めた頃からアパートに引きこもるようになり、ひたすらネットの書き込みをつづけていたという姿が、ここからは浮かんできます。嫌がらせ投稿を理由に100回以上もアカウントを凍結されたにもかかわらず、新規IDで復活してはまた投稿を始めたことからも、その常軌を逸した執着心

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  • 沖縄県知事の死を冒瀆するひとたちの論理 週刊プレイボーイ連載(350) – 橘玲 公式BLOG

    沖縄の翁長雄志知事が闘病の末に亡くなりました。がんを明らかにしてから、ネットには容姿や病状についての読むに堪えないコメントが溢れ、訃報のニュースは一時、罵詈雑言で埋め尽くされました(その後、削除されたようです)。 こうしたヘイトコメントを書くのは「ネトウヨ」と呼ばれている一群のひとたちです。彼らは常日頃、「日がいちばん素晴らしい」とか「日人の美徳・道徳を守れ」とか主張していますが、死者を罵倒するのが美徳なら、そんな国を「美しい」と胸を張っていえるはずがありません。真っ当な保守・伝統主義者は、「こんなのといっしょにされたくない」と困惑するでしょう。 ネトウヨサイトについては、最近は「ビジネスだから」と説明されるようです。しかしこれでも話はまったく変わりません。ヘイトコメントを載せるのはアクセスが稼げるからで、それを読みたい膨大な層がいることを示しています。 自分が白人であるということ以外

    沖縄県知事の死を冒瀆するひとたちの論理 週刊プレイボーイ連載(350) – 橘玲 公式BLOG
    kaeru-no-tsura
    kaeru-no-tsura 2018/09/03
    ホント、自分の行動に自信が持てない“不安”な者たちがつるんで他者を攻撃するのが「差別」なんだよなぁ
  • 待機児童問題で語られない「ゼロ歳児を預かる費用は月額40万円」 週刊プレイボーイ連載(340) – 橘玲 公式BLOG

    安倍首相の「側近」とされる政治家が、党員向けの会合で「『パパとママ、どっちが好きか』と聞けば、どう考えたって『ママがいいに決まっている』」と述べました。「生後3~4カ月で、『赤の他人』様に預けられることが当に幸せなのだろうか」として、「待機児童ゼロ」を目指す政府方針について、「慌てずに0歳から保育圏に行かなくても、1歳や2歳から保育園に行けるスキームをつくっていくことが大事なのではないか」と発言したとのことです。 日は「先進国の皮をかぶった身分制社会」なので、夫は会社に滅私奉公し、は子育てを「専業」にする性役割分業の抑圧がつよく、それが日人の幸福度を大きく毀損していることは間違いありません。私自身も子どもをゼロ歳から保育園に預けていたので、「こんなに小さいときからかわいそう」という周囲の“善意”がどれほど残酷なものであるかも知っています。そんな日社会の既得権層を代表する政治家(オ

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  • 裁量労働制の議論が「日本人はバカだ」に行きつく理由 週刊プレイボーイ連載(338) – 橘玲 公式BLOG

    厚生労働省が、裁量労働制についての調査データに異常値が含まれていたとして約2割の事業所のデータを削除するそうです。全国の労働基準監督署が一般労働者と裁量労働で働く労働者の残業時間を調べたもので、これに基づいて安倍首相が、裁量労働制を導入したほうが残業時間が短くなると答弁したことが問題になりました。 厚労省は資料を開示せずに都合のいい結論を導いており、「誤ったデータに基づいて政策を決めるのはけしからん」との野党の批判はもっともです。こんな醜態をさらすことになったのは、調査や分析をすべて省内で行ない、労働経済学者など外部の専門家を排除しているからでしょう。その結果、「素人仕事」が見破られて立ち往生してしまったのです。 とはいえ、野党のいうように、いったん法案を取り下げて正しいデータを集計し直せばいいというわけではありません。裁量労働制の残業時間が一般労働者より長かったとしても、統計学的には「裁

    裁量労働制の議論が「日本人はバカだ」に行きつく理由 週刊プレイボーイ連載(338) – 橘玲 公式BLOG
  • 自分の妻も管理できない人物に国家を管理できる? 週刊プレイボーイ連載(281)  – 橘玲 公式BLOG

    大阪府の学校法人が首相夫人を「名誉校長」に迎えて新設する小学校の建設用地として、国有地を格安で随意契約した事件が波紋を広げています。「国民の財産」が不当な安値で払い下げられるのはたしかに大問題ですが、それ以上にひとびとの興味を掻きたてたのはこの学校法人の教育方針で、幼稚園では園児に軍歌や教育勅語を唱和させ、保護者に対して「パンツが生乾きで犬臭い」とか、日国籍を取得した韓国人の親に「韓国人と中国人は嫌いです」との手紙を送りつけるなど、常識では考えられない“奇行”の数々が暴かれました。国際社会からも「日の首相夫はヘイトなのか」と疑惑の目を向けられかねず、あわてて「名誉校長」を辞任し火消しに躍起です。 とはいえ、首相が国会で「私やが関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と大見得を切ったのですから、政治的には単純な話です。国有地の格安売却に自らの意向が働いていたとの証拠があれば首相

    自分の妻も管理できない人物に国家を管理できる? 週刊プレイボーイ連載(281)  – 橘玲 公式BLOG
  • アベノミクスがコケても大丈夫! 臆病者のための「資産防衛術」2016〈週刊文春〉 – 橘玲 公式BLOG

    年初から急速に円高が進み、株価も急落しました。また安倍総理は、施政方針演説で「同一労働同一賃金」の法制化を目指すと宣言しています。こうした社会・経済の流れは、昨年末に『週刊文春』(2015年12月24日発売号)に寄稿した「アベノミクスがコケても大丈夫! 臆病者のための「資産防衛術」2016」に書いたので、『週刊文春』編集部の許可を得て全文を掲載します(見出しは適宜つけました。図表は入稿時に参考として添付したものです)。 *********************************************************************** 私の手元に「日の再生に向けた検討課題について」と題された資料がある。民主党時代の平成24(2012)年1月、経済産業省が省内の勉強会として日経済の将来を予測したものだ。 2008年からの3年間で名目GDPが40兆円強も減少し、日

    アベノミクスがコケても大丈夫! 臆病者のための「資産防衛術」2016〈週刊文春〉 – 橘玲 公式BLOG
  • 「非正規」への身分差別は世界の恥 週刊プレイボーイ連載(229) – 橘玲 公式BLOG

    安倍首相が施政方針演説で「同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と発言しました。同じ仕事をしているひとに同じ賃金を支払うのは当たり前に思えますが、驚くべきことに日ではこれまで非常識とされてきました。労働者を「正規」と「非正規」の身分に分けて、正社員のみを会社共同体の正式なメンバーにしているからです。 人種によって異なる扱いをすることが人種差別(レイシズム)で、男女の性別で待遇を変えれば性差別です。それと同様に、正規と非正規(あるいは親会社からの出向とプロパーの社員)で異なる給与体系を押しつけることは身分差別以外のなにものでもありません。 さらに問題なのは、終身雇用・年功序列の日的労働慣行が新卒一括採用や定年制という年齢差別を前提としていることです。これは日国内だけで通用するガラパゴス化した制度なので、日人(社採用)と外国人(現地採用)で国籍差別までしています。これほどまで重層化した差

    「非正規」への身分差別は世界の恥 週刊プレイボーイ連載(229) – 橘玲 公式BLOG
  • 誰もが逃れられない「心理的偏向」のリスト – 橘玲 公式BLOG

    今週は『週刊プレイボーイ』の連載が正月進行で休みなので、代わりにアメリカの心理学者、生物学者デイヴィッド・リヴィングストン・スミスの『うそつきの進化論』から、人類に普遍的(ヒューマン・ユニヴァーサルズ)な心理的偏向のリストを紹介したい。こうした偏向はすべてのひとが(もちろん私も)持っていて、世の中で起きるさまざまな不愉快な出来事の多くを説明するだろう。自戒したい。 自己奉仕的偏向 成功したことを自分の功績と考えようとし、失敗した場合は外部に原因を求めて非難する傾向。 自己過大視的偏向 集団で力を合わせて得た結果に対して、自分の貢献度を不相応なほど大きく考える傾向。 自己中心的傾向 過去の出来事について、自分の果たした役割を過大に評価する傾向。 総意の誤認 大多数の人が自分と同じ意見や価値観を持っていると信じ込む傾向。 独自性の思い込み 自分は他人と違う特殊な存在だと思い込む傾向。 支配力へ

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  • 「同一労働同一賃金」が都合が悪いほんとうの理由 週刊プレイボーイ連載(201) – 橘玲 公式BLOG

    「相手の身になって考えてみよう」というのは、小学生でも知っている道徳の基です。これをちょっと難しくいうと、「自分の主張が正しいのは、自分が相手の立場になっても、その主張が正しいと納得できる場合だけだ」ということになります。 人種差別をするひとは、自分が外国に行ったときに、「お前は黄色人種だからあっちの汚いトイレを使え」といわれて、「わかりました! ひとを人種で差別するなんて、なんて素晴らしい社会なんでしょう」と素直に納得できなければなりません。こんな奇特なひとはめったにいないでしょうから、人種差別が正義に反することが普遍的なルールとして要請されるのです。 「同一労働・同一賃金」は日では労働制度の問題とされ、派遣法改正といっしょくたに議論されていますが、その質は「正義」にあります。 正社員と同じ仕事をしている派遣社員の給料が半分、というのはよく聞く話です。これを当然と思っているひとは、

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  • 「自己責任」は自由の原理 週刊プレイボーイ連載(182) – 橘玲 公式BLOG

    2人の日人がISIS(イスラム国)の人質となり、殺害された事件でまたも「自己責任」論が沸騰しました。 2004年4月のイラク人質事件では、過激派に拘束されたボランティア活動家などが現地の危険をじゅうぶん認識しておらず、被害者の一部家族が政府に自衛隊撤退を要求したことで、「自己責任」を問う激しいバッシングにさらされました。 しかし今回の事件では、2人ともISISの支配地域がきわめて危険だとわかったうえで渡航しており、ジャーナリストはビデオメッセージで「自己責任」を明言しています。「殺されたとしても誰のせいでもない」というひとを自己責任で批判してもなんの意味もありませんから、今回の騒動は「政府(安倍総理)に迷惑をかけるな」という心情的な反発なのでしょう。 人質事件に対し、政府は国民が許容する範囲で救出活動を行ないますが、それ以上のことはできません。 アメリカは「テロリストとは交渉せず」が原則

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  • 女性管理職の割合が上昇しない不都合な理由 週刊プレイボーイ連載(164) – 橘玲 公式BLOG

    安倍政権は2030年までに、管理職など指導的な地位に就く女性の割合を30%にするという目標を掲げています。ところが厚生労働省の調査によれば、企業の課長職以上に占める女性の割合が2013年度は6.6%と、11年度に比べて0.2ポイント下がってしまいました。こんなことでは、「男女平等」など夢のまた夢です。 日企業の管理職はなぜ男性ばかりなのか。かつては、「女性は短大卒が多いからだ」とされていましたが、90年代半ばから短大の4年生大学への鞍替えが相次ぎ、男女教育格差は大幅に縮まりました。それにもかかわらず、女性管理職の比率は一向に増えません。 さらに驚くべきことに、日の会社では、大卒女子よりも高卒男子の方が管理職になる比率がはるかに高いという現実があります。日企業では高卒でも40代のうちに6割以上が課長職以上になり、その比率は大卒の男性とほとんど変わりません。それに対して大卒の女性が管理

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  • テレビはバカに娯楽を提供するメディア – 橘玲 公式BLOG

    最新刊、『バカが多いのには理由がある』から「はじめに」を掲載します。 *********************************************************************** ずいぶん昔の話ですが、仕事の企画で民放テレビのディレクターに会いにいったことがあります。彼は30代後半で、視聴率の高いワイドショーを担当し、業界ではやり手として知られていました。 「僕の話なんか聞いたって仕方ないですよ」 開口一番、彼はそういいました。 「昼間っからテレビを見ている視聴者って、どういうひとかわかりますか? まともな人間は仕事をしているからテレビの前になんかいません。暇な主婦とか、やることのない老人とか、失業者とか、要するに真っ当じゃないひとたちが僕らのお客さんなんです。彼らをひとことでいうと、バカです。僕らはバカを喜ばせるためにくだらない番組を毎日つくっているんで

  • お金はなぜ“汚い”のか 週刊プレイボーイ連載(20) – 橘玲 公式BLOG

    世の中のほとんどのひとは、お金を汚いものと思っています。それと同時に、「お金より大事なものはない」ともいいます。これはいったいどういうことでしょう。 この秘密は、私たちが異なるふたつの世界に暮らしているからです。 私たちにとっていちばん大事なのは親子や兄弟姉妹、夫婦や恋人との人間関係で、これを「愛情空間」とします。次に大事なのは友だちとの関係で、これが「友情空間」です。愛情空間や友情空間を含む、身近な知り合いの住む世界を「政治空間」と呼ぶことにしましょう。私たちの人生のほぼすべては、この政治空間のなかで営まれます。 政治空間の外側には、近所の八百屋のおじさんからアメリカ中国のインターネット通販業者まで、お金のやり取りでしかつながりのない茫漠とした世界が広がっています。これが、「貨幣空間」です。 貨幣空間(市場)はモノとお金を交換する世界ですから、お金がなければ生きていくことができません。

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  • “俺”ではなく“俺たち”を自慢する日本人 週刊プレイボーイ連載(102) – 橘玲 公式BLOG

    アメリカの高校生にリーダーシップがあるかどうか質問すると、7割が「自分は平均以上」と答えます。大学教授を対象とした調査では、94%が「自分は同僚より優秀だ」と回答します。平均より優れたひとは半分しかいないはずですから、これは明らかにおかしな現象です。 心理学では、無意識のうちに自分を過大評価することを「平均以上効果」といいます。私たちの住む世界では、ほとんどのひとが平均以上に知能が高く、平均以上に公平で、平均以上に車の運転がうまいのです。 自分に根拠のない自信を持つ傾向は、「ポジティブ・イリュージョン」として知られています。といっても、“幻想(勘違い)”なんだから矯正すべきだ、といいたいわけではありません。 子どもに対して「もっと現実を直視しなさい」と説教する親や教師がいますが、自己評価と他者の評価が一致している、すなわち“勘違いしていない”ひとの典型はうつ病患者です。あらゆる出来事をネガ

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  • けっきょく、みんな損得で生きている 週刊プレイボーイ連載(87) – 橘玲 公式BLOG

    経済学においては、ひとの行動はインセンティブによって決まると考えます。インセンティブは「誘引」や「利潤動機」などと訳されますが、かんたんにいえば「得したい」とか「損したくない」という感情のことです。 インセンティブは、「ほめられたい」とか、「カノジョ(カレシ)から注目されたい」とか、日常生活のさまざまな場面で重要な役割を果たしますが、そのなかでも経済的なインセンティブは数値化が容易で、議論を数式で表わすことが可能になります。壮大なマクロ経済学の体系も、もとをただせば、「同じアイスクリームなら150円より148円の方がよく売れる」とか、「同じ仕事なら時給900円より910円の方がたくさん応募があるはずだ」というような、誰もが知っている経験則からつくられているのです。 ところで、世の中には経済学が大嫌いなひとがたくさんいて、「みんな損得だけで行動している」という前提(合理的経済人)が根底から間

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  • 週刊朝日は謝罪すべきではなかったし、連載を続けるべきだった | 橘玲 公式サイト

    出版の世界の片隅にいる者として、ノンフィクション作家・佐野眞一氏が『週刊朝日』に書いた「ハシシタ 奴の性」と、その後の出版社の対応について思うことを述べておきたい。 いまから20年ちかく前のことだが、私はその頃小さな出版社に勤めていて、屠場労組の主催する糾弾の場に出たことがある。当時の糾弾というのは、十数社の新聞社・出版社の幹部や編集責任者が一堂に集められ、100人あまりの組合員の前で差別表現を謝罪するというものだった。 典型的な差別表現は「士農工商」「屠殺」「屠所に引かれる羊のように」で、こうした言葉を注釈なしに使った出版社は「差別に対する意識が足りない」として謝罪を迫られた。このとき会場を埋め尽くした組合員から、「お前は踏まれた者の痛みを知っているのか!」などと怒号を浴びるのが“糾弾”の由来だ(もっともこうした糾弾は70年代がもっとも激しく、私が参加したときはかなり形骸化していた)。

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