所得や社会進出の男女格差を語る場合、「女性に出世の窓が開かれていない」「女性だけスタートラインを下げられている」というストーリーが多くの人の基本認識だろう。 私がジェンダー論に入ってきたのは2015年ころだが、当時の大企業では女性に昇進を打診しても断られてしまい困っているという声が多く、「女性に出世の窓を開いているのに来ない」という空気感で、前述のような基本認識とは大きな違いがあった。 この空気感の違いは、2010年代に起きた変化に由来するものなのだろう、というのが最近の私の理解である。この項では、それについて少々小話をする。 20世紀、女性差別の時代 「女性に出世の窓が開かれていない」という問題は、20世紀には間違いなく真実であった。女性は寿退社をする前提で雇われており、何年雇われても出世しなかった。「男は外、女は家」という観念は本来左派である労組男性すら強く支持しており、男女雇用機会均