暗い森の中を手探りで歩いているようなものだ。光が差したときに自分たちが間違ったところを歩いていることにようやく気づく。 アメリカの老舗新聞社を舞台にした映画で、記者が独自に取材源を開拓しながら進める調査報道の難しさについて、編集幹部が記者たちに語るシーンがある。 間違ってばかりで立ちすくむことが多かった私自身の35年間の記者生活を振り返っても、納得できることが多い。目の前で大きな声を上げている人に気を取られ、ほかに大事なものがあることに気がつかない。出口を見つけてたどり着いたところで、何かを森の中に置き忘れてきたことを思い出す。 自分自身の資質の問題なのだろうが、新聞やジャーナリズムの特性によるところもあるように思う。瞬発的に大きな力を発揮することはできても、小さなものや長い目で見なければわからないものを丁寧に深く掘り下げていくことが、新聞のようなメディアは苦手なのかもしれない。 あの時の