2018年2月、認可保育園に落選するために入れそうもない人気園を1園だけ希望する「不承諾通知狙い」の入園申請があることが話題になりました。待機児童問題が深刻化する一方で、この動きは何年も前からひそかに広がっていたようです。なぜそんなことが起こるのか。それは批判されるべきことなのか。「保育園を考える親の会」代表で保育事情に詳しい普光院亜紀さんが実情を掘り下げます。 「不承諾通知狙い」を巡る問題を理解するためにはまず、現行の育児休業制度について正しく理解する必要があります。 育児休業制度は1992年、1歳になる前日まで取得できる制度としてスタートしました。2005年、保育園に入れないなどのやむをえない事情があれば1歳半になる前日まで延長できる制度になりました。 さらに、2017年10月からは、同様にやむをえない事情があれば2歳になる前日まで再延長できることになりました。 これは、法律が保障する
「日本の学校から『いじめ自殺』がなくならない根本理由」で福井県の中学校で起きてしまったいじめ自殺事件を分析した、いじめ研究の第一人者・内藤朝雄氏。 このケースでは調査報告書のなかに「発達障害」という語が19ヵ所みられ、大きなポイントとなっている。診断数が急増し発達障害ブームとも言える中、この概念をどう捉えればよいのか。 発達障害という枠組みには、どんなポジティブな側面があり、また問題点があるのか。批判的に考察しながら、新たな枠組みを提案したい。 前回の記事はこちら:いじめ研究の第一人者が問う、日本の学校が染まる「全体主義」の核心 「発達障害」のストーリーとは? 現在の「発達障害」の第一人者たち、つまり「発達障害」に関して医学生や医師を指導し、著作や学会などで方針を導き啓蒙する精力的な指導者たちの、最大公約数的な基本方針は次のようなものになっている。 (遺伝子の関与が大きく、神経生物学的な基
保育園通いは子どもをどう変えるのか 幼い子どもを持つ親たちの多くにとって、保育園を利用できるかどうかは死活問題である。来年4月からの保育園入園を目指すならば、前年の11〜12月にかけて、書類を整え入園申込書を提出するのが通例だ。 保育園を利用するのは働く親のためと捉えられることが多い。安倍政権はもちろん、過去の政権においても、待機児童解消は重要な政策課題とされてきたが、その最終的な目標は女性の就業率と出生率の引き上げである。 しかし真っ先に影響を受けるのは保育園通いをする当の子どもである。待機児童解消はそれを利用する親にとっては好ましいことなのだろうが、保育園通いは子どもの幸福にとって本当に好ましいことなのだろうか。 これまでの保育をめぐる政策論議の中ではあまり重視されてこなかったが、望ましい政策を論ずるうえで欠かせない論点である。 こうした問題意識から、筆者は共同研究者らとともに、保育園
大阪府守口市の女性(53)が、長男(19)の進学を理由に市が生活保護を一部カットしたのは不当として、府に審査請求している。国は保護を受けながら大学や専門学校に通学することを認めておらず、意欲があっても親の負担を考えて進学を諦める子どももいる。こうした制限が親から子への「貧困の連鎖」の原因とも言われており、国も対策に動き出している。 女性は15年前、夫と離婚。当時3歳の長男と2人暮らしを始めた。養育費はもらえず、幼子を育てながら働ける会社も見つからなかったため、生活保護を受けた。 長男は小学2年のときに発達障害と診断された。他人の言葉を聞き取るのが苦手だ。だが、絵を描くのは大好きで、小4のとき、絵画コンクールで入選。以来、将来の夢を聞かれると「絵を描きたい」と口にするようになった。 中学卒業時は支援学校への進学を教師に勧められたが、イラストを学ぶコースがある大阪市内の高等専修学校を選んだ。3
このトリセツは、発達障害のある人が感じやすい「困りごと」を整理・解説し、当事者や周囲の人の体験談を集めたものです。 このトリセツのコンセプトと使い方 発達障害の症状や状態は、人によって様々です。 この体験談がそのまま解決につながるとは限りません。 でも、同じような体験をしている人も多いこと、本人や周囲の人の理解と工夫によって「障害」と思われていたことが、「個性」にかわることもあるということが、このトリセツからご理解いただけると思います。 このトリセツは「発達障害のある人の困り」に対する理解と工夫を集めていますが、「発達障害でない人の困り」にも役に立つはずです。 お互いの理解・情報の共有が、多様な価値観を共有できる社会の構築につながることを期待しています。 監修:井上雅彦(鳥取大学医学部教授)
高校への進学率は、毎年98%前後を推移しています。一方で、学業不振や家庭の事情、進路変更などさまざまな理由で中途退学する人がいます。その数は1990年前後に、年間で12万人を超えるほどに膨れ上がっていました。現在は少子化の影響もあり、5万人ほどになっています。しかし、高校中退者が置かれている状況はこの数十年、大きくは変わっていません。依然として大きなハンデを負い、生きていかざるを得ないのです。 文部科学省が毎年実施する「高等学校卒業程度認定試験」は、かつては「大学入学資格検定(大検)高等学校」と呼ばれていました。高校を辞めたり、進学しなかったりした人が、高校を卒業した人と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験です。試験の出題範囲は、高等学校のカリキュラムを編成する基準(学習指導要領)の科目(教科書)に対応しています。試験に合格すると、大学、短大、専門学校などの受験資格が与えられ
2分の1成人式、子どもたちが親に「育ててくれてありがとう」と感謝を述べる行事。 先日、私が小学4年を担任していた頃にこの行事を取りやめた経験をツイートしたところ、三千リツイートを超える反響がありました。 2分の1成人式、私は小学校教員時代、直前に父親を亡くした子どもが学級にいたので取りやめた。 個人情報だからやめた理由を言うことができず、保護者から猛烈なクレームが来た。(子ども達は何も言わなかった) どうやら「今まで育ててくれてありがとう」的なことを我が子に言われたかったらしい。 https://t.co/ubgdg2ZFq0 — 青赤元教員 (@makoto_touwa) 2016年12月29日 今回改めて、2分の1成人式をやめるべき理由について、5つにまとめました。 1.いらぬ苦痛を受ける子どもがいる 何といってもこの理由です。この行事によって苦しむ子どもが確実にいます。 私が挙げられ
ようやく2017年度から新設されることになった返還不要の給付型奨学金。安倍首相も「どんなに貧しい家庭に育っても、夢をかなえることができる」と自慢げだが、その中身はスカスカ。恩恵にあずかるのは全学生のわずか2.5%にすぎない。 原因は財源不足。17年度案で給付型奨学金に用意された予算は、わずか70億円で、大学4年生まで行き渡る21年度でも220億円にとどまる。 給付型奨学金は、進学先や下宿の有無に応じて、月額2万~4万円の返還不要の奨学金が大学生に給付される制度。収入条件となる「住民税非課税世帯」には、大学進学希望者が1学年あたり推計約6万人いるのだが、政府の支給定数は2万人。実に3分の2が落選する。 該当者を選択するのは高校の仕事で、成績、部活や生徒会の課外活動、進学の目的などを評価して決めるというが、各校とも割り当てられるのは1学年あたり1~7人という狭き門だ。生徒の将来を左右しかねない
子どもやひとり親の貧困に取り組むNPO法人フローレンスの駒崎です。 年初、「2017年にはぶっ壊したい、こどもの貧困を生みだす日本の5つの仕組みとは」と題した記事を書いたらヤフトピに取り上げて頂き、多くの方に読んで頂きました。 また、貧困支援のプロ、大西連 さんも「2017年は生活保護家庭の子どもが大学進学できる社会にしよう!」というテーマで記事を書かれ、この問題を世に広めてくださいました。 この間、「生活保護家庭の子どもは、大学に行ってはダメ、というのは知らなかった」という意見が、僕に多数寄せられました。 生活保護家庭の子どもは、大学に行ってはダメで、大学に行くには「世帯分離」と言って、もとの生活保護家庭とは別の世帯となることで初めてそれが可能になります。しかしその場合、世帯構成員が一人減るので、保護費は6万円くらい減る。 この減った分をバイトして必死に稼ぎ、さらに授業料等も稼いでいくの
アスペルガー、発達障害関連情報はカオス?! 支援迷子・情報迷子にならないために 我が子が、自分が、アスペルガーかも?と思ったら...今のご時世ならまずするのが「Webで情報をあさる」だろう。 これを読んでいるあなたもそうやってここにたどり着いた方かもしれない。 だが、アスペルガー症候群、発達障害といったものを調べるとまあ出てくる情報がカオスである。 「障害か個性か?」「周囲の理解を」「療育が必要」「治らない」...じゃあいったい何をどうしていいのか?といいたくなる多すぎてクラクラしそうだ。 そしてWebの発達障害関連の情報にもまれて、でもやはり気になるとなるとお世話になるのが各地域の発達障害者支援センター(発達障害者支援センター一覧はこちら(当ブログ別館))や、児童相談所(児童相談所一覧東日本版、児童相談所一覧西日本版)だろう。だが、これも実は結構地域によってクセがある。 というわけで、カ
「異才発掘プロジェクトROCKET」東京大学・先端科学技術研究センター(先端研)で奇妙なプロジェクトが進行している。 その名も「異才発掘プロジェクトROCKET」。 2014年に始まった先端研と日本財団の共同プロジェクトだ。 説明文には「突出した能力」「イノベーションを起こす可能性のある異才を育む教育環境」という言葉が並ぶ。 天才教育なのか? 巨大なオブジェの前に集まるROCKETのスタッフと子どもたち(ROCKET提供。以下同じ)異才発掘と地域コミュニティ?ところが、主宰する中邑賢龍(なかむら・けんりゅう)教授は、意外にも目指すのは「地域コミュニティの復活」だと言う。 「異才発掘」と「地域コミュニティ」がどうつながるのか? 中邑賢龍教授に聞いた。 「おれは暴走男だ」と笑う中邑賢龍教授相当に変わった子たち――どんな子どもたちを対象にしているんですか? 相当変わった小中学生の子どもたちが相手
「親の責任」で済まさない子どもの貧困率が29.9%と、全国平均(16.3%)の2倍近い沖縄県。 とりわけ衝撃的だったのは、子が小学校1年の段階で、貧困層の親の28%が大学進学を断念していると答えたアンケート結果だ。 小学1年と言えば、文字通り教育課程の入口に立ったところだ。 どう転ぶか、まったくわからない。 その時点で、すでに親が断念してしまっているとしたら、その影響は家庭内の会話等を通じて、子どもに何かを伝えていくだろう。 それは「人生の選択肢を広げる」という教育の目的に、根本から疑問を投げかけるような事態だ。 「子どもの貧困は親の責任」とよく言われる。 その通りだろう。 その上で「親の責任」と言っていれば子の状態が自動的に改善するわけではないのも事実。 そもそもすべてが親の責任なら、出産費助成も、乳幼児健診も、保育園も、義務教育も、不要となってしまう。健康管理も教育もすべて親の責任でし
来年4月に予定されていた消費税率10%への増税を再延期したうえで、アベノミクスの是非を争点に7月10日に参院選が行なわれる。アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」の“3本の矢”でスタートしたが、昨年9月、安倍首相は「アベノミクスは第2ステージに移る」として、「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の“新3本の矢”で「1億総活躍社会」を目指すと宣言した。 【詳細画像または表】 新3本の矢は「抽象的なお題目」だと評判はかんばしくないが、社会保障制度や日本人の働き方など、日本社会の根幹にあるさまざまな矛盾にメスを入れる覚悟を示したものともいえるだろう。その一貫として今年1月の施政方針演説では「同一労働同一賃金の実現」を掲げ、「保育園落ちた日本死ね! 」のブログをめぐる騒動では、待機児童問題が一向に改善せず、子育て中の女性
「保育園落ちた~」のツイートで、政府が「一億総活躍社会」をうたっていながら、子どもの預け先が見つからず、仕事に専念できない母親が困っている実情をまざまざと突きつけられた。これほど望まれているにも関わらず、保育園が足りない背景には、保育士不足が挙げられる。保育士の給与や待遇改善が早急に計られる必要もあるが、そもそも子どもがいても女性が活躍している国は、小さな子どもの預け先をどうしているのだろうか? 福祉国家・スウェーデンと市場原理の国・米国での保育園事情を見てみると、保育園整備について国がどの程度、介入しているのかという点がまず違う。至れり尽くせりのスウェーデンは理想的なモデルと思われる。一方、米国は富める者、そうでない者が置かれた立場で子育てと仕事を両立させている。 まだまだ育児は女性の手にゆだねられることが多い日本。女性が輝くためには、どちらの国をモデルに進んでいくべきか、あるいは別の道
圧倒的な絶望感のなかを生きる子どもたちがいる。就学援助の受給率が東京23区内で最も高い板橋区を取材した。(編集部・竹下郁子) 油のこびりついた台所。擦り切れたカーペット。古いアパートには隙間風も入る。 昨晩は毛布にくるまって眠ったんだ、と笑う啓太さん(仮名・19歳)は、夜間の定時制高校に通う4年生。生活保護を受けて、東京都板橋区のアパートで一人暮らしをしている。もともと母子家庭で2人暮らしだったが、母親が2年前、統合失調症で入院した。 母はパートを掛け持ちしながら啓太さんを育ててきた。忙しくて滅多に家にいなかったため、幼稚園から小学3年生まで、啓太さんに母と過ごした記憶はほとんどない。 ●生活保護費をやりくり そんな母の異変に気づいたのは、小学4年生のときだ。具合が悪いと言って家にひきこもりがちになった。会話もかみ合わないことが増え、精神科への通院が始まった。 同時に啓太さんも
子どもが小学校に入学するとき、日本の働く母親が直面するのが「小1の壁」だ。午後7時、あるいはもっと遅い時間まで子どもを預かってくれる保育園から一転して、学童保育は通常午後6時まで。長期休暇中の学童保育には給食がなく、お弁当を持参させなくてはならない。入学式、保護者会やPTAの集まり、授業参観など平日の学校行事もある。子どもの小学校入学を前に悩む母親は多い。 【詳細画像または表】 フランスにはそんな「小1の壁」はない。まず、入学式はない。フランスの新学年が始まる9月、小学校に登校した1年生はホールに集まり、クラス分けが発表された後、担任とともにそれぞれの教室に入る。親も子も入学式用の服を用意したりしなくてよいのは、助かる。 ■ 充実した学童保育は長期休暇中の強い味方 1年生も初日から午前8時30分から午後4時30分まで授業がある。日本の小学校ではしばしば短縮授業があるが、フランスの学校
10月7日に第3次安倍改造内閣が発足したが、そこには安倍晋三政権の目指す教育の姿がより鮮明となってきた。 安倍政権の競争主義的な教育方針を引っ張ってきた下村博文が退き、元副文部科学大臣の馳浩が文部科学大臣(文科相)に起用された。下村が退いたことで安倍政権の教育政策にも変化が現れるのではという期待もあるかもしれないが、期待はずれというしかない。 馳は、9月27日に閉会した第189回通常国会に、いじめや学校に馴染めないといった問題で不登校になっている子どもたちが通うフリースクールなどでの学習を、一定の条件を満たせば学校教育を終えたとみなす法案を提出するための準備を着々とすすめていた。ところが直前になって、「学校の存在価値を揺るがしかねない」との意見が自民党内からでたために、直前になって法案提出を断念した。 とはいえ、廃案にするつもりはないようだ。今度は文科相という立場もあり、法案提出、法制化に
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