◇夢見続け、技術者を育成 この人、いまどきのベンチャー企業経営者らしくない。酒とたばこが大好き。話し始めると技術と夢を語る。「町工場のおやじさん」と言われてニヤッとする。「写真を撮るなら飲み屋のほうがよかったな」 とはいえ、鈴木幸一さん(62)はまぎれもなく、日本のインターネット・ベンチャーの草分けだ。鈴木さんの履歴は、そのままインターネットの短い歴史に重なっている。 若い技術者らと語らって、インターネットの接続サービスをする会社(ISP)をつくったのが92年、46歳のときだ。おなじみの「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)」が開発されたのが、91年。それを見るためのブラウザー(閲覧ソフト)「モザイク」が公開されたのが93年だから、日本の普通の人たちの間には、インターネットの「イ」の字もなかったはずだ。 しかし、すぐに事業を始めることができたわけではない。旧郵政省(現総務省)の厚い壁があった