解剖学者の養老孟司先生の「子どもが自殺するような社会でいいのか」という問題提起からスタートした本連載。なぜ今、子どもたちは死にたくなってしまうのか。社会をどう変えていけばいいのか。課題を一つずつ、ひもといていきます。 前回(日本の子どもに「個性と自己実現」を求めるべきか?)は、「自己の問題」を取り上げました。 日本の伝統的な考え方には、自己という概念がない。そのことを反映するかのように、日本の子どもたちはアメリカの子どもたちと違って、自分の人生を自分で選択したり、自分で決定したりすることを好まない。しかし、西洋の考え方が導入された現代社会を生きる親たちは、子どもたちに「個性を伸ばせ」「自己実現せよ」と求める――。 このような自己の問題は、日本人が明治維新以来抱えているストレスであると先生はおっしゃいます。子どもの自殺が今、増えていることとも関係しているのかもしれません。 (取材・構成/黒坂