75年の歴史に幕を下ろした新橋の居酒屋 ここはJR新橋駅である。周辺も含めてビジネスパーソンたちの憩いの場としても知られた街だ。私たちが新橋と呼んでいる駅は、開業当初は「烏森駅からすもりえき」」と呼ばれていた。誰が、いつ、そう命名したかというのは、はっきりとわかっていないらしい。 新橋の一角にひっそりと佇たたずむ、烏森神社によれば、かつての江戸湾の砂浜で、一帯には松林が広がり、「枯州かれすの森」あるいは「空州からすの森」と言われていた。この松林には、烏が多く集まって巣をかけていたため、後には「烏の森」とも呼ばれるようになったという。 いまは「森」の代わりにビルが林立し、「烏」の代わりに働く人々が街を闊歩し、夜になれば軒を連ねる飲み屋に足を運ぶ。1946年から彼かの地に75年続いた店が、その歴史に幕を閉じた。名前を「蛇じゃの新しん」という。 2020年3月27日――。暖簾のれんを掲げる最後の