終電がとうにない深夜の街で、サラリーマン・爪切男は日々タクシーをハントしていた。渋谷から自宅までの乗車時間はおよそ30分――さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、密室での刹那のやりとりから学んだことを綴っていきます。 【第二十話】「ダメだった時の自分を忘れない男は必ず良い男になる」 シーチキン以外の「食」というものに何のこだわりもない生き方をしてきた。昨今の、男や女の一人飯を描いた漫画やドラマの流行にもピンとくるものがない。飯は基本的に一人で食べるものだと思っているし、温かいミートボールよりも冷えたミートボールの方が美味しい。人の心もミートボールも温めてばかりじゃ趣がない。 「食」に対するこだわりのなさは、外食に関しても同様である。飲食店にて、自分が注文したのと違う料理が運ばれて来たことに激怒している人をたまに見かけるが、あそこまで怒る気持ちが全く理解できない。注文した料理が