「奴婢訓」(ぬひくん、Directions to Servants )は、イギリスの聖職者・詩人・作家ジョナサン・スウィフトによる、召使の処世訓を装った諷刺文書である。スウィフトの晩年の1731年に執筆されたが、一部未完のままとなっている。「召使への訓示」という題名が示すように、家に仕える料理人や侍女や小間使いなどの召使が心得るべき訓戒を並べた体裁となっているものの、内容は逆にそうした召使に怠慢や不正やごまかしなどの悪癖を奨励するという、皮肉に満ちたものとなっている。 語り手は自身の召使体験をもとにして各種の召使の訓示を示すが、その内容たるや、火のついた蝋燭を足で踏み消したり壁に押し付けたり便器につけたりという「蝋燭の消し方」、「塩を節約するためにコップは小便で洗うべし」などのようなとんでもない家事の手抜き方法や、「失敗した時のごまかし方」「色仕掛けによる旦那からの金のしぼり方」などの手口