江國香織「デューク」の優れた意匠のひとつは、銀座にあるという小ぢんまりとした、初夏をモチーフにした古代インドの細密画を飾る画廊の話をはさんだことだろう。思春期に「デューク」を初めて読み、17歳で東京に出てきてからというもの、私は銀座の柳の陰を、路地を、ネオンの隙間を覗き込んでは、いつかはきっと目当ての画廊に巡り会えるはずだという願いを支えにして生きてきた。 * 今日、ようやく、阿豆らいちさんの個展に足を運ぶことができた。 www.secret-base.org らいちさんと直接お目にかかるのは2日前の木曜日が初めてだった。銀座のライオンビルで、1Fの受付で店員さんに話しかけた私の声を耳聡く聞きつけ、 「その声は船橋さんでしょう」 と階段を降りてきて下さった。 そのオフ会のようなところでは、テーブルのお誕生席と対角線の向こう側のような位置関係になったこともあって、あまり密に言葉を交わしたので