問題を根本的に解決しようとする場合に用いられてきた「メスを入れる」という比喩は、もちろん外科手術から来たものである。おおよそ、その意味するところは 「悪いところ(患部)を見つけて、取り除く(それには痛みを伴う)」 といったものだが、問題解決について自然に思えるこのアプローチは、実はかなり限界がある。 世の中の解くべき問題の多くは、問題を特定して取り除いたり置き換えたりする「外科手術的介入」では解決しない、あるいはそうした解決が問題の一部になってしまう(そのため解決に取り組めば取り組むほど問題をこじらせる/長引かせる)ことが少なくない。 先の記事 「もがけばもがくほど蟻地獄」状態に陥った時の抜け方、やり方、考え方 読書猿Classic: between / beyond readers では、こうした逆説的な問題に対する、逆説的な解決方略のひとつ「症状処方」を紹介した。 今回はより網羅的に
あまりうまく書けないがPTSDや心的外傷あたりについて考えたいと思っている。その中核には経験の語りがたさ、語れなさみたいなものがあるだろう。 つまりそれは発語すること、主張というつまり自分の考えや立場を表明するという政治的な身振りをたちまち困難に陥れる。 その困難は精神的な苦境を生み出しらせん状に絶望を強化するのである。 例えば、自分も苦しい目にあったことはあるがその傷つきよりも、傷ついたことで失われるものが大事であり、その失われたものがたいせつだと思うからだ。恥や、自信のなさ、苦しみ、嘆き。それは人との距離の取り方、付き合い方という自明にみえるものが作れない苦痛から来ている。ある経験や気づきを契機に心にいくつかの引き連れやひび割れが入れば、どこかで人との付き合いは不自然な、自明でないものに感じられるようになる。 簡単に言えば不信、絶望の状況である。信は疑いとセットになっているが、信や疑い
四六判並製 本体価格:2400円 2012年1月全巻完結! 分断社会・格差社会と言われ、多くの人が「閉塞感」や「生きづらさ」を感じながら生きている。「世の中いったいどうなっているんだ?」「私の生き方、これでいいんだろうか?」 人びとの心には、生活の原点を見つめ直し、深く広く考えてみたいという欲求が確実に芽生えている。 今それに対して、政治学はどう応えることができるのか。 編集代表:齋藤純一・杉田敦 編集委員:岡野八代・宮本太郎・齋藤純一・宇野重規・田村哲樹・ 川崎修・杉田敦・押村高 シリーズ〈政治の発見〉について この一〇年ほどの間に、いわゆる新自由主義の思想に沿った政策がひき起こした貧困や格差の実態が明らかになり、また近年の「リーマン・ショック」に発する金融・経済の危機は、市場中心の考え方が正しいのかどうかに大きな疑問を投げかけている。教育、労働、健康・医療など生活のさまざまな場面で、「
「ブルジョワジーとその飼い犬に死を – 赤色テロル万歳」と書かれたプロパガンダポスター。ペトログラード。 赤色テロ・赤色テロル(せきしょくテロ、せきしょくテロル、英語: Red Terror、ロシア語: красный террор, tr. krasnyj terror)とは、共産主義者が行なう反政府的暴力行為[1]、革命勢力や反政府勢力、共産主義国が起こすテロ (テロリズム)である。特に、ソビエト・ロシアにおいて、ボリシェヴィキおよび秘密警察チェーカーによって実行された政治的弾圧と大量虐殺、ロシア革命後の1918年9月初めから始まり、1922年まで続いたテロリズムを指す[2][3]。広義には、ロシア内戦(1917-1922年)を通じて行われたボリシェヴィキによる政治的弾圧を指し[4][5][6]、白軍によって実行された白色テロとは区別される。 対義語は白色テロで、これは為政者・政府が反
正宗白鳥や三島由紀夫が深沢七郎を絶賛していることは知っていた. 「楢山節考」が土俗的な味わいを持っていることも理解できた。だが、「楢山節考」が「人生永遠の書として心読すべきもの」(正宗白鳥)と激賞するほどの作品なのか疑問だったし、その土俗的な作家が妙に派手なハワイアン風のシャツなどを着こんでギターを弾いたり、自分の畑に「ラブミー農場」という気取った名前を付けたりするところが腑に落ちなかった。 そのうちに深沢七郎は「風流夢譚」を書いて「渦中の人」となった。世間はこれ以後彼を「面妖な異人」と見るようになったが、私の深沢七郎を眺める目も、そうした世俗の立場から一歩も出ていなかったのである。それでも、彼の本を古本屋で見かけたりすると、何冊か買い込んでいた。けれども、それらの本は買ったきりで読むことはなかった。今日まで、彼の作品で私の読んだものは、「楢山節考」だけだったのだ。 十日ほど前に、「耕治人
『楢山節考』(1956年) 『笛吹川』(1958年) 『東京のプリンスたち』(1959年) 『庶民烈伝』(1970年) 『みちのくの人形たち』(1979年) 深沢 七郎(ふかざわ しちろう、1914年〈大正3年〉1月29日 - 1987年〈昭和62年〉8月18日) は、日本の小説家、ギタリスト。 山梨県出身。職を転々とし、ギター奏者として日劇ミュージックホールに出演。『楢山節考』が正宗白鳥に激賞され、異色の新人として注目を集めた。「中央公論」に発表した『風流夢譚』に関わる右翼テロ事件(嶋中事件)後、筆を折った時期もあったが、土俗的な庶民のエネルギーを描いて独自の作品を発表し続けた。農場や今川焼屋を経営したり、ギター・リサイタルを開催したりと多くの話題を残した。他に代表作『笛吹川』『東京のプリンスたち』『庶民烈伝』『みちのくの人形たち』など。 来歴・人物[編集] 1914年(大正3年)1月2
4月24日、大阪市立科学館は復元作業を行なってきた「学天則(がくてんそく)」を報道陣に公開した。「學天則」は1928年、今から80年前に製作された自動人形(以下オリジナルは旧字体で表記する)。「東洋初のロボット」とも言われている。製作当時は「人造人間」と呼ばれていた。 黄金色の「学天則」は高さ3.2m。オリジナル同様、左手には霊感灯(インスピレーションライト)を持ち、右手には鏑矢のペンを持っている。顔はゴムでできており、圧縮空気を使って目、まぶた、ほほ、口、首、両腕、胸が動く。「學天則」の前に設置された「記録台」のレリーフも現存するオリジナルの写真を参考に再現されている。顔の表情の動きやクビの動きは驚くほどなめらかだ。 復元モデルの制御にはコンピュータとエアコンプレッサーが用いられているが、オリジナルが使っていたドラム式制御がわかる機構模型も合わせて製作された。復元費用は2,000万円。
東京新聞朝刊 2011年2月27日 佐々木敦氏による紹介 「「哲学に何ができるか?」この問いは永遠の問いであり、なおかつすこぶるアクチャルな問いでもある。映画の補足的な解説として付された文章からも、この厳しい問いに毅然として対峙する著者の姿勢が伝わってくる。」 日本経済新聞朝刊 2011年3月6日 書評掲載 「危機に瀕する人文学の苦悩と希望が詰まった一冊」 紀伊國屋書店・書評空間 2011年3月7日 http://booklog.kinokuniya.co.jp/staff/archives/2011/03/post_15.html 「大学での研究・教育活動を支援する職業に就く者として、大いに啓発された。デリダの思想の詳細や、その他むずかしいことは私には全く分からないが、そんな私にとっても、本書は、閉塞感漂う今の社会で、希望を捨てずに頑張る力を与えてくれるものであった。本書の読者は、その職
⇒はてなブックマーク - 10代で読んでいないと恥ずかしい必読書 - その1 - PictorialConnect ⇒10代で読んでいないと恥ずかしい必読書 - その1 - PictorialConnect とかいいながら、けっこうこれらは私は10代で読んだな。背伸びしたいころであった。 プラトン『国家』 これは存外に面白い本なんだが、いろいろと手順みたいのが必要なんで、「プラトン入門 (ちくま新書): 竹田 青嗣」を先にきちんと読んでおいたほうがいい。 アリストテレス『ニコマコス倫理学』 れいのサンデル先生というかコミュニタリアンで再評価されつつある。現代的な文脈でいうなら、サンデル先生の説明をきちんと理解するだけでよいと思うよ。 ⇒[書評]これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学(マイケル・サンデル): 極東ブログ ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』 これ1
VOL 3号に『 ポスト・ノー・フューチャーにとって政治とはなにか──シーンなきアートの現場から (by 工藤キキ)』というインタビューが掲載されている。工藤キキさんという人については全く知らないのだが、このような雑誌に載っていることからみて、左翼系の人たちと何かつながりがあるのだろう。しかしこのインタビューの内容は、アンチ・キャピタルなVOLの編集方針と大きく隔たっており、第3号のテーマとされている「アートとアクティヴィズムのあいだ」という問題に対する混乱と無理解を象徴しているものではないかと思う。 このインタビューで工藤氏は会田誠(参考)、岩本愛子(参考)、Chim↑Pom(参考1,2)などのアーティストを例にとりながら、日本の新しいアートムーブメントの政治性ついて語っている。その特徴として、「虐げられているという前提からの抵抗」のようにリアクティヴなものではないことや、特定の表現メデ
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