「思いきってはっきりと言わせてもらうけど、我々がドイツでやっているのは、もしかしたら、どのみち半年後には死んでいるような人々を助けているだけのことになるんですよ」。コロナ禍が始まった直後の2020年4月、ロックダウンなどのさまざまな対策について、テレビでこう冷ややかに述べたのは、南独の伝統ある大学町テュービンゲン市の市長ボリス・パルマー氏だ。高齢者への配慮から経済を押さえ込むのにどれほどの意味があるのか、いずれ先は長くない人々ではないか、ということだろう。 ボリス・パルマー氏は緑の党から打って出て市長になった。市長就任後に町の道路を歩行者中心に切り替え、深夜バスを増やし、自らの公用車もガソリン消費量の観点からトヨタのハイブリッド車に切り替えた。 そういう市長なら普通は「人道的な」発言を世間は期待するところだが、こうした「冷酷な」発言が飛び出したために、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。