学生は評価システムの奴隷になっているのではないか。そのような反省から東京工業大は2016年からリベラルアーツ教育を導入し、独自のカリキュラムを実施している。一連の改革を進めたのが、文化人類学者で、3月まで東工大副学長を務めた上田紀行さん(65)。ジャーナリストの池上彰さんとの対談では、リベラルアーツ教育の必要性や、教育の問題点などについて幅広く語った。【構成・瀬尾忠義】 「これが正解」の危険性 池上 理系の大学でリベラルアーツの教育が細々とスタートしました。それが今やリベラルアーツといえば東工大と言われ、大学関係者らの視察も相次いでいます。なぜ、この教育が大切だと考えたのですか。 上田 1990年代半ばから「大学はもっと社会に役立つ人材、即戦力を出すべきだ」との声が強まってきました。その流れで教養教育が軽視されるようになり、早く専門教育をすべきだという考え方が主流になりました。この流れに強