一連の品質問題で揺れるトヨタ自動車だが,国際規格制定よりもはるか以前に品質マネジメントの体制を構築するなど,日本製造業の品質向上を常にリードしてきた存在だった。その同社で,なぜ今回のような問題が起きたのか。モジュラーデザインの第一人者でトヨタ研究家でもある日野三十四氏は,製品段階での品質検証の重要性を説いた創業理念が風化しつつある可能性を指摘する。一見関係の薄そうな創業理念と品質にどのような関係があるのか,トヨタの歴史をひも解きつつ,同氏に解説してもらった。(日経ものづくり) (前回から読む) 「創造的なものは,完全なる営業的試験を行うにあらざれば,発明の真価を世に問うべからず」---。これは,明治時代に自動織機を発明して日本の経済発展をもたらした発明王で,トヨタ自動車の社祖である豊田佐吉の語録である。一般に発明家は,発明の過程での苦労は喜びとするが,実用化の過程の苦労は苦手とする。佐吉は