周辺でゴミの不法投棄が多発したのか、錆の目立つ金網のあちこちに、子どもたちが書いたポイ捨て禁止の絵が括り付けられている。風雨で傷み始めたそれらと、いかにも昭和な病棟を交互に眺めるうちに、精神科医くるみざわしんさんが劇作家として生み出した演劇作品「精神病院つばき荘」での、長期入院患者らのセリフが脳裏に蘇った。 「私たちはとてつもなく大きなものに見放され、見捨てられている」 この数十年間、精神科病院でのおぞましい虐待や人権侵害が嫌というほど発覚した。問題を起こした病院の多くは、この国や社会から見捨てられた「棄民」を閉じ込める収容所だった。事件が発覚して廃院に追い込まれる施設も一部あったが、同様の事件は今も発生し続けている。 収容所がいつまでも無くならない理由は、この社会が求めているからだ。そもそも病院監視役の行政が、問題の多い病院を「対応が面倒な患者をすぐに放り込める場所」として便利使いしてい