車道のない集落、宇遠内。生活の足は小型の漁船。冬場は海が荒れて出船できないので、町中心部の別宅に移る。重機が乗り入れられないため下水工事ができず、菌でし尿を分解する「バイオトイレ」が活躍している(写真=寺岡 篤志) ここは、日本最北の有人島(北方領土を除く)、北海道礼文島にある宇遠内(うえんない)地区だ。グーグルマップで礼文島の西岸を丁寧に見ていくと、1カ所だけ、周囲に道などないのに海岸に人工物らしきもの(写真のS字型防波堤)がある場所が確認できる。そこが宇遠内だ。 アイヌ語で「悪い川」を意味するこの地に、本土から移住者が入植したのは明治期とみられる。入植の目的はニシン漁ともいわれているが、それにしてもなぜここまで偏狭な場所を選んだか公式の記録はなく、謎に包まれている。結局、極端な地理的条件の影響は大きく、住民は約50年前の最盛期でも十数世帯。現在は3世帯9人しかいない。 外形的事実だけ見