交通事故などが原因で後遺症が出る「軽度外傷性脳損傷」に苦しみながらも、世間の理解が進んでいないために悩みを深める人たちがいる。健康的に見えても味覚や嗅覚を失い、記憶障害がある大阪府東大阪市の藤本久美子さん(40)もその一人。「同じ悩みで苦しむ人を減らしたい」。今月、仲間とともに全国の自治体に相談窓口の設置や啓発活動の実施を求める陳情書を提出した。(永原慎吾) 「家族に迷惑をかけてばかり。生きている価値がない、必要のない人間だと考えたこともある」。藤本さんは一番つらかった時期を苦しそうに振り返った。 軽度外傷性脳損傷は、交通事故や労災事故、スポーツ中の事故などで頭部に衝撃を受けて脳振盪(しんとう)を起こし、脳内の神経組織が損傷することで発症するケースが多い病気だ。主な症状は頭痛や手足のまひ、記憶障害。発症まで数カ月かかることもあり、MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影)で