わからない、から始める 重度の知的障害や自閉症がある人たちは、一般に「意思能力が不十分」とされ、施設や親元ではなく地域で自立して生活するのはきわめて困難であると思われがちだ。けれども本書には、そんな彼らと介護者が日々さまざまな場面を通して、共同で意思決定を積み重ねることにより、それなりに地域で自立して「自分の生活」「自分の人生」を穏やかに生きられるという実践が記されている。 知的障害をもつ人たちは、彼らなりの世界を持ちつつ生きている。しかし、ことに強い行動障害などがある場合、それらは「問題行動」とみなされ、当事者にのみ問題をかぶせるのが私たちの社会の常である。本書の一番の読みどころは、著者らもまた、そんな彼らの世界を完全には理解しきれない――「ズレているかもしれない」というリアルな認識に立ちながらも、どうにか「おりあい」を 見出 ( みいだ ) そうと模索し続けるところにある。もっというと