内閣府は26日、災害時に救助が必要となる高齢者や障害者らに早期避難を促すために市町村が出す「避難準備情報」の名称を、「避難準備・高齢者等避難開始」に変更した。8月の台風10号で同情報が正しく理解されず、岩手県岩泉町の高齢者施設で避難が遅れて入所者9人が亡くなったことを受け、意図が伝わりやすい名称に改めた。避難情報の伝え方について検討していた有識者会議が同日、報告
熊本地震の前震から7カ月となる14日、被災者のために熊本県内で建設が予定されていたすべての応急仮設住宅が完成した。同県益城町と御船町でこの日新たに計48戸が完成し、16市町村に4303戸が整備された。 益城町の福富仮設団地にはバリアフリー対応の仮設住宅が全6戸整備された。2DK(37・3平方メートル)で、玄関やトイレ、浴室の段差を解消。出入り口の幅は80センチ以上で、車いすで楽に通ることができる。町によると、車いす利用者や視覚障害者など4世帯10人が入居予定という。 19歳の時に屋根から転落して頸椎(けいつい)を損傷し、車いすを使っている作本誠一さん(50)は町の避難所が閉鎖された後、町が役場近くに開いた「待機所」でバリアフリー対応の仮設住宅の完成を待っていた。作本さんは「これまでは自分の居場所がないような気がしていた。まずは入居してから、使い勝手を確かめたい」と話した。(大森浩志郎)
熊本地震の発生後、熊本市が避難所に開設した「マンホールトイレ」が、国土交通省の「循環のみち下水道賞」を受賞した。下水管に直結したマンホールの上に、簡易型トイレを取り付けることで、避難所の「トイレ問題」を解消した。今後の災害に備えて、市は公共施設などでの増設を検討する。(南九州支局 谷田智恒) ◇ 大地震などで甚大な被害に見舞われた被災地では、避難者数に対してトイレがが不足することに加え、断水によってトイレ環境が劣悪になるケースが多く見られる。 飲料水は、給水車なども使って比較的早期に搬送されるが、トイレに流す水までは、発生初期は手が回らないことが多い。 こうしたトイレ問題に備え、全国では、簡易トイレの備蓄に乗り出す自治体も増えている。それでも、避難生活が長期化する場合、より容量の大きなトイレ確保が必要となる。 マンホールトイレは、公共の下水道管につながったマンホールを整備する。その上に組み
大規模な災害が発生したとき、障害者はどうなるのか? 4月の熊本地震が起きた直後から現地で障害者支援を続けている熊本学園大教授で弁護士の東(ひがし)俊裕さん(63)が、三重県庁で被災地の実態を語った。福祉団体や行政関係者ら約200人が、障害者が避難所から排除され、復興から取り残された状況に耳を傾けた。 東さんは自身も車いすで生活し、内閣府の障害者制度改革担当室長も務めた。4月16日の熊本地震の本震で、熊本学園大は急きょ700人ほどの避難所となり障害者も約60人受け入れた。はじめ障害者は身動きが取れない状況だったが、車いすの人が床に降りて休め、介護者が入るスペースや動線も確保された。 だが多くの避難所では、障害者への配慮がなく利用できなかった。パニックになった精神障害者が「避難所に置けない」と言われたり、行列に並べない障害者が支援物資を受け取れなかったりした。閉め出された障害者は、車中泊や崩れ
避難勧告を受けて避難所に集まった住民たち。心配そうにテレビの災害情報を見つめていた=那須塩原市関谷で2015年9月10日午前0時43分 高齢者避難、依然課題に 県内が浸水、土砂崩落など大きな被害に見舞われた昨年9月の関東・東北豪雨から、10日で1年となる。先月31日には岩手県の高齢者福祉施設で水害により入所者の高齢者が犠牲になるなど、依然として水害対策が十分ではない現実が浮き彫りになった。こうした中、県内の自治体や住民は昨年の豪雨被害をどう教訓化したのか。防災への取り組み、災害からの復興に向けた動きを追った。【野口麗子】 台風10号の豪雨被害に見舞われた岩手県岩泉町の高齢者グループホームでは、多くの認知症の高齢者が犠牲になるなど、「災害弱者」の避難の難しさを突き付けられた。
熊本地震で、災害時に高齢者や障害者を受け入れるために指定されている熊本県内の福祉避難所のうち、発生1カ月半後の6月1日時点で受け入れ可能と確認できた施設は115カ所で、全体の4分の1だった。4分の3は、受け入れ態勢が整っていなかったか、受け入れ可能か確認できなかった。 県への取材でわかった。国や県は、災害発生後の速やかな福祉避難所の立ち上げなど課題を整理し、今後の災害対策に生かしたい考えだ。 県によると、福祉避難所は461カ所指定されており、約7400人を受け入れられる。6月1日時点で受け入れ可能だと確認できたのは、このうち115カ所(2401人)だった。 実際に福祉避難所として開設し、障害者らを受け入れたかどうかも県は調査。前震翌日の4月15日時点では27カ所が開設され、12人を受け入れていた。最も多かったのは6月1日時点の93カ所で、777人を受け入れていた。 避難の際に手助けが要る「
大分県別府市で震度6弱を観測した4月16日前後、市内に住む障害者の避難状況について、当事者101人に聞き取った調査結果を、市などが公表した。「避難できなかった」と答えた障害者が約3割にのぼった。 別府市と支援者らの団体「福祉フォーラムin別杵(べっき)・速見実行委員会」、県市町村社協職員連絡協議会が5月10日から4日間かけて、同市亀川地区の20~80歳代の身体、知的・精神の各障害者に聞き取った。半数が65歳以上で、2割以上が一人暮らしだった。 集計によると、避難したのは24人。避難しなかったのは75人だった。75人のうち、24人は避難の「必要性を感じない」と答えたものの、31人は「避難できなかった」と回答。理由について聞き取りに、「寝たきりや夫婦とも障害があり、移動は無理」「視覚の障害で動けなかった」と話したという。 残る20人は「その他」「わからない」だった。 一方、避難した24人に行き
熊本地震では、介護を必要とする高齢者や障害者らの安否確認と避難に、課題を残した。多くの自治体は事前に要支援者名簿を作っていたが、管理システムがダウンしたり、情報が古かったりした。普段から名簿を外部に提供する場合は、記載された本人の同意が必要で、災害対策のハードルになっている。 ■更新 政府は平成25年、災害対策基本法を改正し、支援が必要な人の名簿作成を市町村に義務付けた。東日本大震災で65歳以上の死者が全体の6割を占め、障害者の死亡率は住民全体の約2倍に達したからだ。 総務省消防庁によると、昨年4月時点で全国の市町村の52%が名簿を作成済みで、今年3月までの作成予定を含めると98%に上った。だが、熊本地震の例からは作った後の運用に課題が浮かぶ。 2度の震度7に襲われた熊本県益城町は、約2400人分の名簿データを準備していた。ところが、地震後、役場に入れず、パソコンも動かなくなり、5月上旬ま
熊本地震では避難所となった体育館で多くのお年寄りも過ごした=熊本県益城町で2016年4月16日、岩崎邦宏撮影 災害時に支援が必要な高齢者や障害者ら「要援護者」が、県内に少なくとも3万人以上いることが全17市町への毎日新聞の調査で分かった。しかし、要援護者が避難する「福祉避難所」の収容能力は、比較可能な13市町で計約5%にとどまり、災害時にほとんど機能しない恐れのあることも判明。熊本地震では避難所などで震災関連死が表面化しており、県内でも災害弱者への抜本的な備えが急務だ。【岩崎邦宏】 災害時要援護者は、自力避難が困難で支援を要する被災者。2013年成立の改正災害対策基本法で、市町村に名簿の作成が義務付けられた。 この記事は有料記事です。 残り1368文字(全文1622文字)
車椅子に乗って避難所にいる馬場トミ子さん(左)と娘の京子さん=熊本市東区の市立長嶺中学校で2016年4月17日、山本愛撮影 やまない余震とライフラインの復旧の遅れで、避難者が増えている。避難生活でとりわけ困難を感じているのが、病気や障害がある「災害弱者」だ。 熊本県益城(ましき)町広崎の坂本清文さん(66)は妻紀久子さん(63)と近くの小学校の教室に避難した。7年前に脳内出血で倒れ左半身不随で、要介護5。電動の介護用ベッドは避難所に持ち込めず、教室の床に段ボールと毛布を敷いて寝る。おむつは紀久子さんが交換するが、停電が続く中夜の介護は難しい。 入浴は普段デイサービスに任せており、今は水でぬらしたタオルで体を拭くのが精いっぱいだ。「いつまでこんな状態が続くのか」。心労も重なり、紀久子さんは先の見えない避難生活に頭を抱える。
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