虐待を受けたり、養育が困難な家庭で育っていたりする子どもは、保育所の段階でさまざまな能力の習得に遅れがみられる--。大阪の保育士が159人の子どもの記録を分析し、こんな実態を明らかにした。家庭環境と就学前の子どもの発達の相関関係を調べた実証研究は国内では珍しい。「家庭に依存しがちな日本の就学前教育が、『社会で育てる』という方向に変わるきっかけになってほしい」と話す。
2月、中部地方のある中学校の保健室は、夜も窓から明かりが漏れていた。日中から続く健康相談会。校医を務める小児科の女性医師が定期的に開いている。 この日、生徒10人ほどが相談に来た。寄せられる相談の多くは「不定愁訴(ふていしゅうそ)」。体調がすぐれないのに原因が見あたらない状態のことだ。 居酒屋で働く少女(16)は中2の秋、相談会に来た。「頭が痛い。ときどきおねしょする。あたし、病気なの?」 「大きな病気じゃないのよ。眠りが浅くて睡眠の質が悪いの」。落ち着かせながら、家庭環境を尋ねた。頭痛、尿失禁など思春期の不定愁訴に貧困がひそむ事例を、これまで何度も目にしてきた。 母子家庭で姉と兄がいる。母親はパートで働いたが、長続きしない。終日パチンコ店にこもる。精神的に不安定で、掃除も食事の支度もしない。 子どもたちは母親が持ち帰る弁当1個を分け合って命をつないだ。空腹に耐えられず、兄が隣の玄関先に置
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