認知症が原因となり暴れる親を制止したことで、家族が虐待を疑われる事例がある。中には逮捕され、職を失った人も。親の介護はただでさえ負担が大きいのに、虐待の疑いもかけられた家族は途方に暮れる。 「部屋で暴れてつかみかかってきた母の腕をつかんで、制止しただけなのに…」。大阪市東淀川区、元大阪大歯学部助教の佐保(さほ)輝之さん(56)は唇をかむ。 “事件”があったのは二〇一一年六月二十日未明。佐保さんによると、同居していた母親の重子さん=当時(80)=が突然暴れ始めた。佐保さんと妻のひかるさん(53)、父(88)の三人がなだめ、二時間後にやっと重子さんが落ち着いた。ところがその晩、重子さんが肋骨(ろっこつ)骨折による外傷性ショックで死亡。九カ月後、佐保さん夫婦は母親への傷害致死容疑で逮捕された。 佐保さん夫婦は一貫して無罪を主張したが、一審は懲役八年の判決。二審では、重子さんが認知症の影響で暴れて