第6章「守るために」(1) 「お母さんがごはんをつくる回数が減った。もっと作ってほしいけど、あんまり無理を言うとお母さんが困るから言わない」 ワーカー(児童福祉司)のミエコ(仮名)は小学生の息子が書いた作文を読み、胸が張り裂けそうになった。 もともとは保育士として働いていた。児童相談所(児相)の虐待対応チームに入って2年目の40代。10歳から18歳まで3人の子の母親でもある。 児相は1日24時間、365日対応だ。児相が閉まる週末や祝日は、緊急対応する当番を決める。当番のワーカーは休日でも基本的には家にいて、いつ連絡があっても対応できるようにしている。 最近、公用の携帯が鳴ると、子どもがびくっと反応するようになってしまった。母親が緊急で呼び出されることがわかっているからだ。 平日も夜の9時、10時の帰宅はふつう。それから作り置きしておいたおかずと、ゆでたうどんで子どもたちと夕食ということも珍
わきにある刺し傷を見ると、よく生き残って来られたものだと、大阪市内の上原よう子さん(34)は、今でも思う。 実父の虐待は生後まもなく始まった。3歳のとき、母の手伝いをし、お盆に載せたおかずを食卓に運ぶ際に転んでしまった。逆上した父が手にしたのは、果物ナイフだった。 それが、わきの傷だ。愛想を尽かした母は、離婚して2つ上の兄とともに家を飛び出してくれたが、平穏は長くは続かない。母が再婚した相手も、また、子供に暴力をふるう人だった。 職に就かず、昼間から酒を飲み、パチンコに負けては兄や私に手をあげた。中学にあがる頃には、学校に行かせてもらえず、監禁状態になった。風呂に何度も沈められ、鉄パイプで頭を殴られることもあった。 「憂さを晴らしていたのだろう」。そう思う。風呂嫌いになり、年中、肩にふけをためていた。たばこの火を体に押し当てられ、背中にも無数の傷がある。兄は腕がケロイド状になり真夏も長袖が
子どもが虐待で亡くなる事件が後を絶ちません。兆候があっても児童相談所や自治体が十分に対応できなかったり、行政と保育施設、病院などの連携が不十分だったりして防げなかったケースも少なくありません。虐待から子どもを守るための社会の仕組みについて考えます。 「救えなかった」無念今も 子どもの命をみつめる企画「小さないのち」。児童虐待の実態を伝えた一連のシリーズに、ある政令指定市で虐待対応を担当している職員からも匿名で声が寄せられました。 この職員は、かつて担当した子が虐待で命を落としました。ネグレクト(育児放棄)状態だったため、児童相談所(児相)に「危ない」と伝えていましたが、結局、一時保護されないまま、親からの暴力で亡くなりました。「救えなかったという気持ちは今も残っている。たぶんずっと乗り越えられない」と、無念の思いを記者に語りました。 重大な虐待事件が起きると、自治体は第三者の検証委員による
去年3月までの1年間に、虐待を受けて死亡した子どものうち、1歳未満の乳児では、70%の母親が妊娠を望んでいなかったことが厚生労働省の分析でわかりました。 さらに、厚生労働省が詳しく分析したところ、虐待によって死亡した27人の乳児のうち、70%に当たる19人では、母親が妊娠を望んでいなかったことがわかりました。こうした母親の多くは自宅など病院以外で出産し、そのまま放置していたということで、なかには、育児に関する不安や精神障害を抱えていたり、夫などから暴力を受けたりしていたケースもあったということです。 厚生労働省は「望まない妊娠をした女性を支援するため、助産師や保健師などが、妊娠から子育てまでの相談を一括して受け付ける窓口を全国の保健所などに整備したい」としています。
中核市「慎重」7割=都内15区は設置方針-児童相談所でアンケート・時事通信 人口20万人以上の中核市47市の7割強に当たる35市が児童相談所(児相)の設置に慎重であることが、時事通信社が行ったアンケートで分かった。一方、東京23区のうち15区は2017年4月の改正児童福祉法施行から5年以内に設置する方針で、中核市と23区で対応が大きく分かれた。 児相は都道府県と政令市に設置が義務付けられているが、増加し続ける児童虐待に対応が追い付いていない。今月27日に成立した改正法では、児相を増やすため、新たに23区による設置を認めるほか、施行後5年をめどに全ての中核市と23区が設置できるよう国が必要な支援を行うと明記した。 調査は19~26日、全国の中核市47市と東京23区を対象に実施。児相設置に関する方針とその理由を尋ね、全70市区から回答を得た。 中核市では32市が「未定」としたほか、大津、
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