かつて罪を犯した人との出会いをきっかけに、性暴力の被害体験を語り始めた女性がいる。「被害者も、加害者も、世の中から無くしたい」。立場の違いを越え、思いを共有できたことで被害と加害の連鎖を断とうと前に進んでいる。 被害体験を話すようになったのは、大分県在住の工藤千恵さん(45)。8歳の時、塾からの帰り道、50代の男に道を聞かれ、断ると右手首をつかまれた。 「騒いだら殺すぞ」。1キロほど引きずられるように歩かされ、ビニールハウス脇に押し倒された。怖くて声は出ず、涙だけが流れた。警察官数人が男を取り押さえたが、見られてはいけないところを見られた罪悪感に駆られた。 男に襲われたことは、事件翌日には小学校の友人たちに知れ渡っていた。その後、学校では心を貝のように閉ざし、存在を消すように心がけた。中学になると、女性らしくなる体が受け入れられなくなった。大量に薬を飲んだり、仲間と飲酒したり。「むちゃくち