聴覚に障害のある人が防災情報を受け取れるよう、気象庁は緊急記者会見に手話通訳の導入を検討している。既に試験的に実施しており、今後、設置したスクリーンに発言者の言葉を文字として流す方法も研究し、秋ごろには方針を決める。 気象庁は大きな地震や大雨の際に担当者が記者会見し、テレビなどのメディアを通じて、今後の見通しや避難の呼び掛けなど防災上、必要な情報を伝えている。ただ、音声での伝達になるため、視覚的な伝達はメディアがテロップを入れて対応する必要があった。 気象庁は試験的に、2月に開かれた2回の定例記者会見で、リアルタイムで通訳することが可能だと分かった。(共同)
災害発生時の現状把握が難しい聴覚障害者に必要な情報を円滑に発信するため、気象庁は、緊急記者会見の内容を手話で同時通訳する「手話通訳」の導入に向けた検討を始めた。 国の会見での手話通訳は現在、首相と官房長官のみ。同庁は今後、手話通訳士らの意見や要望を聞いた上で、早ければ今秋にも運用を始めたい考えだ。 同庁は、震度5弱以上の地震発生時のほか、津波注意報や大雨など特別警報の発表時、火山が噴火した際などに緊急記者会見を開いている。手話通訳の導入後は、会見者の横に手話通訳士に立ってもらい、双方をテレビの中継画面に映すことを想定している。会見が休日や深夜、未明になることもあるが、聴力障害者情報文化センターによると、手話通訳士は今年3月現在、全国で3601人が登録されており、急な派遣にも対応が可能だという。
災害時に課題 聴覚障害者らでつくる四国ろうあ連盟(事務局・香川県観音寺市)などが、四国4県の手話の「方言」をイラストで紹介した冊子を発行した。全国各地でそれぞれ発展した手話は意味や表現が異なることがあり、災害など緊急時のコミュニケーションで課題となっている。同連盟は地域の手話を継承するとともに、南海トラフ巨大地震などに備えて手話通訳の混乱を防ぎたい考えだ。【山口桂子】 全日本ろうあ連盟によると、聴覚障害者は全国に約35万人おり、うち約7万人が手話を使う。同じ言葉でも地域によって表現の仕方が異なることがあり、全国共通の「標準手話」の指定が1969年から日本手話研究所(京都市)によって進められている。だが、周知の機会が少なかったり、時代とともに新たな表現が必要になったりするため、身近な生活環境にある手話を先に習得するケースも多いという。
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